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トーハンとDNP、出版流通改革で提携/物流を合理化「書店粗利益改善につなげる」
日時: 2021/08/19 17:59:48
情報元: 新文化

トーハンと大日本印刷(DNP)は、生活者を起点とする出版流通改革に向けて、全面的な提携を行うことに合意し、具体的な取り組みを開始する。両社の強みを活かし、出版流通を持続可能なものとすることを目指して、出版デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む。7月12日、トーハンの川上浩明代表取締役副社長、田仲幹弘取締役副社長、DNPの中川清貴常務執行役員出版イノベーション事業部担当、五味英隆出版イノベーション事業部副事業部長が会見し、提携の概要を説明した。
出版市場全体の売上減少傾向が続き、物流ネットワークの逼迫と相俟って、出版流通全体の改革が求められる中、両社はあらためて生活者を起点とした全体最適の視点に立ち、出版流通の基盤を再整備する必要があるとして、この再整備に最優先で取り組むことで、物流の合理化や出版社の返品在庫の廃棄極小化を図り、「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にもつなげていくとしている。
課題解決に向けては「製造・物流改革」「情報流通改革」「商流改革」「販促改革」の4つの改革をする。「製造・物流改革」では、製造と物流の連携による適時・適量の配本体制の確立を図る。「情報流通改革」では、読者の需要情報(注文・購買)や書店・出版社の在庫を共有する情報基盤の確立を目指す。「商流改革」では、読者の需要に応じたマーケットイン型販売体制の確立を図る。「販促改革」では、書店の顧客向けのマーケティング力の強化、新たな読者獲得手法の提供を目指す。
取り組みの第1弾として、これまでDNPが丸善ジュンク堂書店と共同で整備してきた書籍流通センター(SRC)を、新たにトーハン桶川SCМセンター内に設置し、トーハンの倉庫・物流機能との連携を強化して、製造・物流改革を推進する。設置時期は2022年夏~秋を予定。
1冊から製造可能なDNPの書籍製造一貫工場、白岡工場との連携強化や出版社倉庫との連携拡大で、情報流通改革としての適時・適量配本を実現する。
これらの取り組みを土台とし、商流改革の一環として、読者ニーズを起点とした共同仕入れの取り組みを進めるとともに、販促改革として書店での販売力の向上を図る。
まずトーハンおよびDNPのグループ書店でテストを実施し、その後、両社グループ以外の書店の参入を促進。全国規模での出版流通改革の実現を目指す。
今回の両社の連携により、マーケットの需要に応じた配本を強化し、出版流通市場全体で書店の欠品をなくし、販売機会の増大を図る。すでに出版社ではオーム社、偕成社、河出書房新社、新星出版社、ポプラ社、有斐閣など、書店では三省堂書店が参画の意思表明をしている。
記者会見の冒頭、トーハンの近藤敏貴社長とDNPの北島義斉社長のメッセージ動画が上映された。
近藤社長は「書店の経営環境は年々悪化し、書店数は往年の半分まで減少している。出版文化発展の要となる書店は世の中に不可欠で、絶対に守り続けなければならない。今回、DNPと出版流通改革に向けての志を同じくすることができた。両社のリソースを組み合わせることで、製造・流通・小売と出版流通のサプライチェーン全体をカバーする大きな改革を実現することができると考えている」と提携の意義を説明した。
北島社長は「新たな読者の獲得や返品削減など業界全体が連携した出版流通改革の実施についてトーハンに相談し、同じ志を持つ者同士がまず連携していこうと業務提携に至った。トーハンの書籍配送の強みとDNPの印刷の強みを掛け合わせて、書籍の製造・流通の一貫体制を構築するなど、出版流通のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む」と意気込みを語った。
提携の趣旨と目的を説明したトーハンの川上副社長は、「知の拠点である書店が苦境に立たされている。経営悪化の大きな原因は書店が手にする粗利益率の低さにある。日本の出版文化を明日につなげるため、書店粗利益の改善は必須。DNPとの提携で流通インフラを整え、書店粗利益改善につなげる」と述べた。
合意概要を説明したDNPの五味副事業部長は、「リアルでもオンラインでも、本の魅力を伝え、来店してもらうための顧客接点として、書店は重要な役割を果たす」と述べた。
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