出版・書店 業界 NEWS BOOKSルーエ


出版書店 業界NEWS TOPへ > 記事閲覧           新文化 定期購読 受付  

紙の出版販売金額、今年上期は2・9%減/雑誌はコミックスが大幅増/出版科研調べ
日時: 2020/09/22 18:52:37
情報元: 日書連

出版科学研究所は2020年上半期(1~6月)の書籍・雑誌分野別動向をまとめた。これによると紙の出版物の推定販売金額は6183億円で前年同期比2・9%減となった。内訳は書籍が同3・0%減の3517億円、雑誌が同2・9%減の2667億円。電子出版市場は同28・4%増の1762億円になった。

新型コロナウイルス感染症拡大で、政府は4月に緊急事態宣言を発令。書店は営業自粛要請の対象外となったが、4月から5月にかけて休業や時短営業する店舗が相次いだ。書籍、雑誌ともに発行の延期・中止が続出し、送品数が大幅に減少する一方、返品も少なかった。

〔コロナ禍で児童書や学参などに特需/書籍〕
書籍の販売金額は3517億円、前年同期比3・0%減で、前年より減少幅が1・8ポイント縮小した。3月2日に全国一斉休校が始まると自宅学習のニーズが高まり、小学生向けドリルや学習要素の強い児童書が急激に売上を伸ばした。文芸書、ビジネス書、文庫本、新書、実用書などの主要ジャンルは、都市部の大型書店休業の影響が大きく、マイナスになった。しかし書店の営業が再開した5月末から6月以降の販売状況は、概ね好調だった。
販売部数は、同3・8%減の2億8053万冊。新刊平均価格は同1・1%増の1218円、出回り平均価格は同1・3%増の1200円だった。金額返品率は32・1%で同2・8ポイント改善した。新刊点数は同3・9%減の3万4039点で、このうち取次仕入窓口経由が同4・7%減の2万3371点、注文扱いが同1・9%減の1万668点で、取次仕入窓口経由は8年連続のマイナス。新刊点数は、コロナ禍の影響で4、5月期は大きく減少した。
20年上半期のジャンル別動向をみると、文芸書は、凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)が本屋大賞受賞後にブレイクし、初版1万部の作品が5月上旬には37万部まで伸長した。人文・社会では、19年刊のブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)がテレビでの紹介を機にさらにブレイクし、53万部に到達。文庫本は、コロナ禍を機にヒットする作品が複数登場し、なかでもカミュ『ペスト』(新潮文庫、04年刊)は2月以降に計36万4千部を増刷、累計で125万部に達した。

〔定期誌は合併号や刊行延期が相次ぐ/雑誌〕
雑誌の販売金額は2667億円で前年同期比2・9%減となり、前年の5・1%減から減少幅を縮めた。内訳は、月刊誌が同1・6%減の2206億円、週刊誌が同8・5%減の461億円。月刊誌は定期誌が約12%減、ムックは約19%減、コミックスが約30%増となった。定期誌は、コロナ禍で取材等の制作進行が困難になったことで、250誌以上が合併号や刊行延期となったことも影響し、大幅減となった。コミックスは『鬼滅の刃』(集英社)が爆発的な売行きを示したのをはじめ、アニメ化作品でのヒットも多く、大幅に伸長した。
推定発行部数は同7・0%減。内訳は、月刊誌が同5・7%減、週刊誌が同10・4%減。推定発行金額は同7・1%減で、月刊誌は同6・7%減、週刊誌は同8・7%減だった。平均価格は同0・2%減の584円。価格の安い少年向けコミックスが大幅に部数を伸ばしたため、雑誌全体ではマイナスとなった。
金額返品率は同2・6ポイント減の41・6%で、月刊誌が同3・1ポイント減の41・6%、週刊誌が同0・2ポイント減の41・7%。4月に、日本雑誌協会と日本出版取次協会が5月末までに発売された雑誌の返品期限を延長する施策を発表した影響もみられた。また、コミックスの好調が月刊誌の返品率改善に寄与した。
創・復刊点数は同14点減の18点、休刊点数は同11点減の53点だった。『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)、『東京ウォーカー』(KADOKAWA)など有力誌休刊の発表も相次いだ。不定期誌の新刊点数は増刊・別冊が同100点減の1466点、ムックは同440点減の3239点。コロナ禍で刊行を先送りする動きも目立った。1号を1点とした付録添付誌数は同297点減の5134点。

〔紙+電子の出版販売額は2・6%増〕
20年上半期の電子出版の市場規模は1762億円で前年同期比28・4%増、金額で390億円増加した。内訳は、電子コミック(電子コミック誌含む)が33・4%増の1511億円、電子書籍が同15・1%増の191億円、電子雑誌が同17・8%減の60億円。
コミックは、紙と同様に『鬼滅の刃』などヒットしたコンテンツが多数登場したことや、外出自粛に伴いユーザー数が増加したため3割超の大幅増に。書籍は、リアル書店の休業や、東野圭吾など電子化を解禁する作家が増えたこともあり、売上を伸ばした。雑誌は、定額制読み放題サービス淘汰の動きもあって大きく落ち込んだ。
上半期の紙と電子の市場を合わせると7945億円、同2・6%増。市場全体における電子出版の占有率は22・2%となった。
メンテ

Page: 1 |