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紙と電子のコミック市場、12・8%増の4980億円/『鬼滅の刃』大ヒットなどで大幅増/出版科研調べ
日時: 2020/04/22 18:52:24
情報元: 日書連

出版科学研究所が発行する『出版月報』2月号は、「コミック市場2019」を特集。これによると、昨年の紙と電子を合わせたコミック市場規模は、前年比12・8%増の4980億円。紙は同1・0%減の2387億円、電子は同29・5%増の2593億円と大きく伸長した。

2019年のコミック市場全体(紙+電子)の販売金額は前年比12・8%増の4980億円で、2年連続のプラスとなった。電子の統計を開始した2014年以来過去最高を更新した。内訳は、紙のコミックス(単行本)が同4・8%増の1665億円、紙のコミック誌が同12・4%減の722億円、電子コミック(コミック誌含む)が同29・5%増の2593億円。電子コミック誌の統計は、電子コミック誌の概念自体が曖昧になっており、各社の売上高集計が困難であるため、今年の発表から電子コミックに統合した。
19年のトピックスとしては、最大のヒットとなったのが『週刊少年ジャンプ』連載の『鬼滅の刃』(集英社)。19年4月のアニメ放映スタート時には累計5百万部に達していたが、アニメでさらに人気を拡げて一気に大ブレイク。9月には1千万部を突破した。12月発売の18巻は初版百万部を発行し、19年末には累計2339万部に到達。19年1月~12月の1年間に刷られたシリーズ全巻の部数は2065万部と『ONEPIECE』(集英社)をも上回った。

〔映像化作品の好調で5年ぶりプラス/紙のコミックス〕
紙のコミック市場概況を見ると、コミックスの販売金額は同4・8%増の1665億円。コミックスは、コミック大手出版社が18年に新刊価格を値上げしたことに加え、各社の映像化作品が好調に推移。特に『鬼滅の刃』が社会現象と呼べるほどの大ブレイクを果たし、14年以来5年ぶりのプラス成長になった。
コミックスの内訳は、雑誌扱いコミックスが同6・1%増の1472億円、書籍扱いコミックスが同4・5%減の193億円。書籍扱いコミックスは、前年『SLAMDUNK新装再編版(全20巻)』(集英社)が発売され大幅に伸びた反動もあってマイナスになった。
平均価格は同2・2%(12円)増の557円で、内訳は雑誌扱いコミックスが同2・3%(12円)増の537円、書籍扱いコミックスが同2・1%(15円)増の732円。雑誌扱いコミックスは、18年に新刊価格を値上げした大手出版社が既刊も徐々に新価格に変更している。書籍扱いコミックスでは、KADOKAWAが2月頃から平均30円ほど値上げした。新刊点数は同172点減の1万2805点となった。内訳は、雑誌扱いコミックスが同301点減の9295点、書籍扱いコミックスが同129点増の3510点。
売行きの動向をみると、少年向けは、『鬼滅の刃』以外にも『約束のネバーランド』『Dr.STONE』(いずれも集英社)、『BEASTARS』(秋田書店)などアニメ化タイトルが好調。『五等分の花嫁』(講談社)は本編の他にキャラクターブックも発売され売行きを伸ばした。『ONEPIECE』、『進撃の巨人』(講談社)、『名探偵コナン』(小学館)など大ヒット作品も好調を持続している。『ドラえもん』(小学館)は50周年を記念して11月に第0巻を発売、多くの反響を呼び、発売前重版を2度行った。
青年向けはヒットタイトルの人気が継続。『キングダム』(集英社)が実写映画化もあり、根強い人気を保っている。少女向けは新たなヒット作が乏しかったが、『思い、思われ、ふり、ふられ』(集英社)、『夏目友人帳』(白泉社)などが堅調。レディースコミックはやや苦戦するも、『ちはやふる』(講談社)、『深夜のダメ恋図鑑』(小学館)など既存のヒット作は引き続き売れている。

〔販売金額、部数ともに2桁減が続く/紙のコミック誌〕
コミック誌の販売金額は同12・4%減の722億円、販売部数は同15・2%減の1億9936万冊で、ともに近年は2桁減が続いており、販売部数は2億冊の大台を割った。
販売金額の内訳をみると、月刊誌が同13・0%減の354億円、週刊誌が同11・5%減の369億円。青年週刊誌が同9・4%減と比較的減少幅が抑えられているが、多くが1割以上のマイナスと厳しい状況。
返品率は同1・2ポイント増の44・5%で、依然として1ポイント以上の増加が続く。無料で読めるサービスやアプリが数多く存在しており、連載媒体としての役割はWebにシフトしてきている。
コミック誌全体の推定発行金額は同10・5%減の1301億円。内訳は月刊誌が同13・8%減の708億円、週刊誌が同6・2%減の593億円。発行部数は同12・5%減の3億4022万冊。内訳は月刊誌が同16・1%減の1億3896万冊、週刊誌が同9・8%減の2億126万冊。
コミック誌全体の平均価格は同8円増の382円。内訳は月刊誌が同14円増の510円、週刊誌が同11円増の294円。各誌少しずつ価格水準が上がっており、増税のタイミングで値上げする雑誌も多かった。
コミック誌の動向をみると、人気作品のキャラクターグッズなどを付録につけて好調な売行きを示す号はあるが、継続して購読する読者は減少を続けている。『ジャンプSQ.』(集英社)は小幅な減少で17万部。『月刊少年マガジン』(講談社)は30万部を割ったが実売率は高めを維持した。週刊誌は、『週刊少年ジャンプ』は170万部から160万部に漸減。『鬼滅の刃』のシール付録を挟み込んだ11月25日号は完売店が続出した。

〔販売金額は29・5%増の2593億円〕
電子コミック市場は、同29・5%増の2593億円。海賊版サイト「漫画村」が18年4月に閉鎖して以降、正規の電子ストアやアプリが順調に売上を伸ばし、販売金額でコミック誌を含めた紙のコミック市場を上回った。販売施策では、引き続き無料増量や割引・ポイントバックキャンペーンが積極的に展開されている。
トレンドとしては、「異世界もの」が引き続き人気で、その中でもテーマが多岐にわたっており、ブームの域を超えてジャンルとして定着している。男性向け作品では「異世界もの」のほか、紙のコミックスでも売れている定番商品が人気。『鬼滅の刃』が紙のコミックが品切れしたこともあり、電子版も大きく伸長した。女性向けでは、恋愛や不倫がテーマの作品が根強い人気を集めている。
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