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出版販売金額5・7%減少/書籍2・3%減、雑誌9・4%減/出版指標年報
日時: 2019/05/31 21:31:11
情報元: 書店組合

全国出版協会・出版科学研究所が発行した『出版指標年報2019年版』によると、2018年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比5・7%減の1兆2921億円で、マイナスは14年連続となった。内訳は、書籍が同2・3%減の6991億円、雑誌が同9・4%減の5930億円。雑誌は深刻な落ち込みが続くが、コミックスの回復基調で2年連続の2桁減は免れた。

〔児童書、ビジネス書が堅調推移/書籍〕
書籍の推定販売金額は6991億円で、前年比2・3%減。話題書は多かったものの、文芸、生活実用、学参、文庫本、新書などの主要ジャンルが前年割れとなり、12年連続のマイナスとなった。一方、児童書やビジネス書が微増となり、市場全体では減少幅は前年より縮まった。特に児童書は相次いで出版社が参入し、高橋書店、ダイヤモンド社など児童書では新興となる出版社が底上げした。
推定販売部数は同3・4%減の5億7129万冊で、冊数ベースでは金額以上に大きく落ち込んだ。14年以降、文庫本の大幅減が毎年続いており、18年も販売部数では同7・9%減少。新刊点数を抑制し、効率的な販売を探る文庫出版社が増えているが、年々文庫本離れが進んでいる。
18年のベストセラーをみると、テレビの情報番組での紹介など、プロモーションを強化した書籍が爆発的に売れる傾向は変わらず。また16年や17年に刊行された書籍が継続して売れており、18年の新刊で象徴的な売行きを示す書籍は少なかった。また、18年の新刊で年内にミリオンを達成した書籍はなかった。
平均価格は出回り平均価格が同1・0%(11円)増の1164円と、5年連続で上昇した。新刊平均価格は同0・1%(1円)増の1168円。絵本や文庫本、新書で価格上昇が見られた。
金額返品率は36・3%で同0・4ポイント改善した。取次会社が返品減少・効率販売を目指し新刊、重版ともに送品部数を抑えていることが奏功した。
新刊点数は7万1661点で同1・9%減。内訳は、取次仕入窓口経由の新刊が同1・3%(677点)減の5万859点、注文扱いの新刊が同3・3%(719点)減の2万802点だった。取次仕入窓口経由は6年連続の減少。新刊推定発行部数は同0・7%減の3億1215万冊と微減にとどまった。2分冊で刊行された『新・人間革命』(聖教新聞社)の最終巻や、児童書の部数増などが影響した。
ジャンル別動向をみると、文芸書は、前年に村上春樹の新刊など大部数のヒットが多かった反動でマイナスに。その中で、芥川賞受賞の若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社)と本屋大賞受賞の辻村深月『かがみの孤城』(ポプラ社)が50万部超のヒットを記録した。ノンフィクション・読み物では、『漫画君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)が210万部、新装版が53万部の大ヒット。コミックエッセイ『大家さんと僕』(新潮社)は74万部に伸長した。
文庫本は販売金額で同6・8%減と厳しい状況が続く。新書は下重暁子などのシニア向け生き方本や、磯田道史を中心とした日本史関連書が好調だったが、全体では低調だった。児童書は、『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)などの動物生態本が各社から刊行されブームに。「おしりたんてい」(ポプラ社)が大ブレイクし、初版20万部超を発行する人気シリーズに成長した。
18年の単行本総合ベスト10は以下の通り。<1>漫画君たちはどう生きるか/吉野源三郎・原作、羽賀翔一・漫画/マガジンハウス<2>大家さんと僕/矢部太郎/新潮社<3>信仰の法/大川隆法/幸福の科学出版<4>新・人間革命(30)(上)/池田大作/聖教新聞社<5>君たちはどう生きるか/吉野源三郎/マガジンハウス<6>頭に来てもアホとは戦うな!/田村耕太郎/朝日新聞出版<7>おらおらでひとりいぐも/若竹千佐子/河出書房新社<8>かがみの孤城/辻村深月/ポプラ社<9>極上の孤独/下重暁子/幻冬舎<10>九十歳。何がめでたい/佐藤愛子/小学館

〔コミックスのマイナス幅縮まる/雑誌〕
雑誌の推定販売金額は5930億円、前年比9・4%減と21年連続のマイナスを記録。内訳は月刊誌が同9・3%減の4844億円、週刊誌が同10・1%減の1086億円。月刊誌のうち定期誌のみでは同10・1%減、ムックは同11・0%減、コミックスは同6・7%減だった。コミックスは大手出版社の値上げや映像化作品のヒット、海賊版サイト「漫画村」の閉鎖などがあり、年後半にかけて減少幅が縮小、これにより雑誌全体での2桁減を免れた。定期誌では好調なジャンルは見当たらず、グッズ付録や一部アイドルを起用した雑誌が単号で売れる傾向が続いている。ムックは送品を抑制したものの販売金額ではマイナス幅が拡大した。
推定販売部数は同11・2%減の10億6032万冊。内訳は、月刊誌が同11・1%減の7億5598万冊、週刊誌は同11・4%減の3億434万冊。推定発行金額は同9・4%減の1兆537億円。内訳は、月刊誌が同9・8%減の8691億円、週刊誌が同7・4%減の1846億円。平均価格は同1・4%(8円)増の574円で、部数の減少を価格の上昇で補う傾向が続いている。
返品率は前年と同率の43・7%。内訳は、月刊誌が同0・3ポイント減の44・3%、週刊誌が同1・9ポイント増の41・2%。コミックスやムックを含めた月刊誌は改善傾向にあるが、コンビニの占有率が高い週刊誌は年間返品率がついに40%を超えた。
不定期誌の新刊点数は、増刊・別冊が同4・7%(162点)減の3316点。ムックは同7・4%(633点)減の7921点と8千点を割り込んだ。1号を1点としてカウントした付録つき雑誌点数は、同927点減の1万1228点。
年間の創復刊点数は同9点減の60点と過去最少になった。この半数近くは分冊百科とパズル誌が占めている。休刊点数は同22点増の129点。『YOU』や『別冊花とゆめ』などコミック誌や、『SCawaii!』『RUDO』などファッション誌の休刊が相次いだ。

〔雑誌が9・8%減と初の縮小〕
電子出版の市場規模は2479億円で、同11・9%増、金額で同264億円増加した。内訳は、電子コミックが同14・8%増の1965億円、電子書籍が同10・7%増の321億円、電子雑誌が同9・8%減の193億円。紙と電子の出版市場を合わせると1兆5400億円、同3・2%減になった。
コミックは、4月の「漫画村」閉鎖以前は大手出版社を中心に売上が減少する社が多かったものの、年後半は回復基調がうかがえた。電子書籍は、配信点数の増加に伴い毎年10%程度の成長が続く。紙で売れた書籍が電子でも良く売れており、特に「異世界転生」がテーマのライトノベルの好調が目立った。電子雑誌は、月額定額制雑誌読み放題サービス「dマガジン」の会員数減少が影響し、年間では初めてマイナスになった。
メンテ

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