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東京都トラック協会「出版物関係輸送懇談会」/「経営成り立たない」「2〜3年以内に撤退も」/出版物輸送各社の窮状、実態調査で浮き彫りに
日時: 2018/09/15 18:53:18
情報元: 日書連

東京都トラック協会(東ト協)の出版・印刷・製本・取次専門部会(瀧澤賢治部会長=ライオン運輸)は8月21日、東京・新宿区の東京都トラック総合会館で「第40回出版物関係輸送懇談会」を、輸送業界の厳しい現状を考慮して従来行ってきた11月から前倒しして開催。出版物輸送の現状と課題について荷主団体の日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書籍出版協会、印刷会社、東京都製本工業組合、日本書店商業組合連合会と意見交換した。また、部会員企業を対象に行った「出版物関係輸送の経営実態に関するアンケート」の調査結果を報告。出版物輸送で経営が成り立っていない企業がほとんどで、2〜3年以内に撤退を考えている企業が半数を超えるという、出版物輸送の危機的な実態が浮き彫りになった。
このアンケートは7月に実施し、部会員企業23社のうち14社が回答。
その結果、「取次→店舗」へ輸送している会社9社中8社、「版元→取次」へ輸送している会社4社中3社が「出版物輸送で経営が成り立っていない」と回答した。
ここ1〜2年で荷主から運賃の値上げがあったのは、「取次→店舗」で「あった」が9社中6社、「なかった」が2社だったのに対し、「版元→取次」では4社とも「なかった」と答えた。
労働時間など法令に基づく経営を行っていくことは可能かという質問には、「取次→店舗」で9社中8社が「不可能」と回答し、「版元→取次」で4社中3社が「不可能」とした。
今後、出版物輸送を継続していくか問うたところ、「取次→店舗」で4社が「継続する」、5社が「一部撤退する」と回答。「版元→取次」で2社が「継続する」、1社が「一部撤退する」、1社が「撤退する」と回答した。
「撤退する」「一部撤退する」と回答した企業に、何年以内に撤退の見込み、または撤退の可能性があるか聞くと、「取次→店舗」で5社中2社が「1年以内」、1社が「2〜3年以内」、1社が「CVS部門はすぐにでも撤退したい」と回答。「版元→取次」では2社とも「2〜3年以内」と回答した。
瀧澤部会長は「問題は長い間やってきた形が限界にきたこと。重量制運賃は業量があることが前提だが、そこが毀損してきた」と指摘。「運賃を上げてもらうことは荷主にとって負担が大きい。輸送事業者も経費を下げねばならないが、今ある作業を現実に続けるためには費用から目をそらすことはできない」と運賃問題に言及するとともに、使用車両の合理化や作業方法の改善を提案。「すべての出版関係者が知恵を出し合い、今後の出版物輸送のあるべき形をスピード感をもって構築しなければならない」と呼びかけた。
荷主側から、日本雑誌協会物流委員会の隅野叙雄委員長(集英社)は「今あるものを減らさないためにどうするかを考えなければならない」として、減り続ける業量を確保するため、週刊誌や月刊誌以外の新しい魅力ある商材の企画が必要と強調。雑協と取協のワーキンググループで進める業量の平準化、売上のヤマを作るための取り組みなどを説明した。
トーハン・柏木祐紀輸送管理部長は「重量運賃、最低運賃、軒先運賃は業量に左右される。取次が支払うための原資は、売上金額や出版社からの運賃協力金などすべて業量に起因している」と問題点を指摘し、「業量に左右されない運賃体系を検討する時期にきている」と述べた。
日販・安西浩和専務は、非効率的と言われるCVSへの出版物輸送について「CVSは全国で6万店、書店は1万3千店。もしCVSへの配送がなくなれば、点在する書店に長い距離を走ることになりかねない。共存して成り立っている面があるのは事実」と指摘した。
東ト協側から、栗原運送・栗原誠社長は「運賃は20年前からずっと変わらず、出版社と値上げ交渉もできていない。人件費に合わない配送をしているのはどこか無理があり会社として成り立たない。いずれ淘汰され、間違いなく無くなる。時代に合った運賃にすることが必要」と訴えた。
出版輸送・手嶋章博社長は「運賃以外で改善するところはいっぱいある。人が関わらない輸送方式、時間を先取りした配送など、合理化を図れる方法を考えたい」と述べた。
相川運送・相川宏之社長は「長く出版物輸送だけやってきたが、今は出版物輸送以外の仕事にシフトして、何とか経営を維持している」と自社の状況を説明。「輸送業界の中で、同業者からは『出版物輸送に手を出してはいけない。納期が厳しく、単価が安い』と言われている」と率直に語った。
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