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文庫市場、5・1%減の1015億円/『出版月報』17年文庫本レポート
日時: 2018/05/02 18:50:08
情報元: 日書連

出版科学研究所発行の『出版月報』3月号は「文庫本マーケット・レポート2017」を掲載。これによると、昨年の文庫本(コミック文庫を除く)の推定販売金額は前年比5・1%減の1015億円となり、4年連続で5%以上のマイナスを記録した。同レポートから文庫市場の動向を紹介する。
2017年の文庫本市場の推定販売金額は1015億円、前年比5・1%減と4年続けて大幅減となった。消費税が増税された14年が6・2%減となって以降、3年連続で6%台の落ち込みを記録し、17年は減少幅こそ縮まったものの販売環境の厳しさは依然続いている。推定販売部数は同5・4%減の1億5419万冊で、金額以上に減少幅が大きかった。東野圭吾、湊かなえ、池井戸潤、佐伯泰英といった定番人気作家の作品や映像化作品に販売が集中し、それ以外の作品が苦戦するという傾向が続いている。
新刊点数は同2・2%(182点)減の8136点で、3年続けて減少した。出版社別にみると、雑学文庫や少女向けティーンズ文庫の点数を減らしたKADOKAWAが最も多い101点減となったほか、講談社が44点減、新潮社が38点減、PHP研究所が20点減、徳間書店が19点減など、大手出版社の点数減が目立った。一方、文芸社が95点増、スターツ出版が44点増、中央公論新社が40点増、岩波書店が23点増など、増加した出版社も多く見られた。17年の創刊文庫は3シリーズで、ディスカヴァー・トゥエンティワンで初の文庫刊行となる「ディスカヴァー文庫」などが創刊された。
新刊推定発行部数は同1・4%増。売行き上位タイトルで初版部数の大きい新刊が多かったため前年を上回ったが、全体では各社が初版部数を抑える傾向にある。新刊に既刊(重版+注文分)を加えた推定出回り部数は同5・7%減の2億5571万冊で、特に注文分の不振が響いた。
返品率は同0・2ポイント減の39・7%。各社が返品改善のため送品を抑制する傾向にあり、僅かながら6年ぶりに改善した。講談社、早川書房、双葉社などヒット作が多かった出版社は大幅に返品率が改善した。出回り平均価格は同2円(0・3%)増の658円。新刊平均価格は同4円(0・6%)増の674円となった。市場に大部数出回るベストセラーに5百〜6百円台と比較的安価な作品が多く、出回り、新刊とも価格上昇が抑えられた。
17年の文庫本の動向をみると、売行きトップは住野よるのデビュー作『君の膵臓をたべたい』(双葉文庫)で、文庫版は17年4月に初版40万部で発売。読者層は高校生や大学生から40〜50代に広がり、発売から約3ヵ月後には100万部に到達、現在137万部まで伸び続けている。
17年後半には、早川書房の文庫本が飛躍的に伸びた。10月にカズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞、同氏の作品の文庫本は全て早川書房から刊行されており、文庫7点のトータルで125万部を重版。新刊『忘れられた巨人』は23万部まで伸長した。
時代小説は、完結した佐伯泰英「居眠り磐音江戸双紙」の続編「空也十番勝負青春篇」(双葉文庫)が16年12月末から発売され、初版30万部を刊行する人気シリーズになっている。このほか田郁、上田秀人など定番人気作家の作品が堅調に推移した。
ライトノベル(ラノベ)市場は、推定販売金額が同5・9%減の190億円と5年連続で減少した。新刊点数は同124点減の2220点。ラノベ文庫で市場全体の約6割のシェアを持つKADOKAWAが苦戦し、16年はアニメ化作品のヒットが多く好調だったが、17年は映像化作品から新たなヒットが登場せずマイナスになった。
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