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紙と電子のコミック市場、0・4%増の4454億円/紙の市場は9・3%減出版科研調べ
日時: 2017/04/01 18:14:05
情報元: 日書連

出版科学研究所が発行する『出版月報』2月号は、「紙&電子コミック市場2016」を特集。これによると、昨年の紙と電子を合わせたコミック市場規模は、前年比0・4%増の4454億円。紙は同9・3%減の2963億円、電子は同27・5%増の1491億円となった。

2016年のコミック市場全体(紙+電子)の販売金額は4454億円で、前年比0・4%増加した。内訳は、紙のコミックス(単行本)が同7・4%減の1947億円、紙のコミック誌が同12・9%減の1016億円、電子コミックスが同27・1%増の1460億円、電子コミック誌が同55・0%増の31億円。
コミックス単行本とコミック誌を合わせた市場規模では、紙が同9・3%減の2963億円。15年連続のマイナスとなり、1984年以来32年ぶりに3千億円を割った。電子は同27・5%増の1491億円。紙の落ち込みと電子の高成長という対照的な結果で、紙の減少を電子が補完してトータルのコミック市場は前年比で僅かに増加した。

〔既刊の苦戦で過去最大の落ち込み/紙のコミックス〕
紙のコミック市場概況をみると、コミックスの販売金額は同7・4%減の1947億円で過去最大の落ち込みとなった。販売部数は同8・0%減の3億7021万冊。『暗殺教室』、『こちら葛飾区亀有公園前派出所(こち亀)』(ともに集英社)など『週刊少年ジャンプ』連載の人気作品、長尺作品が相次いで完結し、映像化で売上を大きく伸ばす作品もなかなか出現しなかった。電子コミックが成長を続ける中で、紙のコミックスは既刊の掘り起こしに苦戦している。映像化関連の作品点数は前年並みの約180点だったが、同じ人気作を第2期・第3期と繰り返し映像化する例も多く売上は伸び悩んでいる。
平均価格は同4円(0・8%)増の526円。返品率は同0・8ポイント増の31・1%と3年連続増加した。新刊点数は同0・2%増の1万2591点。内訳は雑誌扱いコミックスが同0・6%増の9762点、書籍扱いコミックスが同1・1%減の2829点。
ジャンル別に傾向をみると、少年向けは『暗殺教室』『こち亀』のほか『ニセコイ』『BLEACH』『トリコ』(以上集英社)と『週刊少年ジャンプ』連載作が相次いで完結し、コミックスの売行きは厳しかった。少女・女性向けも全般的に厳しい状況。テレビドラマが大ヒットした『逃げるは恥だが役に立つ』(講談社)はドラマ放映期間中に重版を連発、全巻合計で百万部以上が増刷された。青年向けは『キングダム』(集英社)の好調が続いており、16年内だけでもシリーズ累計で5百万部以上が増刷された。アニメ映画も高い評価を得た『この世界の片隅に』(双葉社)は上中下巻で累計百万部を突破するなど、大きく売上を伸ばした。
コミック文庫は、販売金額が同24・0%減の24億円、販売部数は同23・9%減の336万冊と大幅なマイナスが続く。新刊点数は同36・3%減の177点。既刊の掘り起こしを主眼に置いたコミック文庫は、電子コミック市場の伸長による影響を最も受けている形態となっている。
コンビニエンスストアの占有が高い廉価軽装版の販売金額は同8・2%減の157億円、販売部数は同8・8%減の3178万冊。コンビニの店舗数は増加するも出版物の売場は冷え込み、什器を減らす店舗も多くみられ、大幅減が続く。新刊点数は同5・6%増の1312点だった。

〔金額は最盛期の3分の1以下に縮小/紙のコミック誌〕
紙のコミック誌の販売金額は前年比12・9%減の1016億円、販売部数は同14・1%減の2億9900万冊と、2年連続で2桁の大幅減を記録。販売金額はピーク時の95年(3357億円)から3分の1以下に縮小した。
16年12月末時点でのコミック誌全体の発行銘柄数は、同6点(2・5%)減の231点で、ここ数年続いていた5%以上の落込みに歯止めがかかった。
コミック誌全体の推定発行金額は同10・8%減の1695億円となり、初めて1割以上落ち込んだ。返品率は同1・4ポイント増の40・0%と大台に乗った。発行部数は同12・2%減の4億6681万冊で、刊行形態別では月刊誌が同12・2%減の1億9987万冊、週刊誌が同12・1%減の2億6694万冊。
月刊誌では、子ども向けが同16・7%減とマイナス幅が最も大きかった。「妖怪ウォッチ」効果で15年初頭には百万部を超えた『コロコロコミック』は16年末には80万部前後まで後退した。少女3誌では『カードキャプターさくら』の新連載開始号が完売した『なかよし』は、それ以外の号が振るわず年末に10万部割れ。『ガラスの仮面』50巻に収録されるエピソードの一部が小冊子付録になった『別冊花とゆめ』や、『ポーの一族』の40年ぶりの新作が掲載された『flowers』など、通常部数変動が少なく固定ファンを抱える雑誌が増刷され話題になった。
週刊誌では、少年向けが同13・3%減。『週刊少年ジャンプ』は年末に2百万部前後まで後退、『週刊少年マガジン』が百万部を割り込んだ。青年向けは同9・7%減。『キングダム』など人気作が連載中の『週刊ヤングジャンプ』は小幅な落ち込みにとどまったが、他は振るわなかった。
コミック誌全体の平均価格は同5円(1・4%)増の363円。内訳は月刊誌が同7円(1・5%)増の483円、週刊誌が同4円(1・6%)増の273円。付録をつけた号など特別定価を設けて通常定価より高く設定する雑誌も多く、平均価格の上昇が続いている。

〔過去作を掘り起こし、紙への波及も/電子コミック〕
電子コミック市場は、電子コミックスの販売金額が前年比27・1%増の1460億円、電子コミック誌が同55・0%増の31億円だった。
紙と電子を合わせたコミックスは、同4・8%増の3407億円。紙のコミックスは前年より7・4%減少する一方、電子コミックスは3割近い成長を続けているため、仮に翌年も同程度に推移すると、紙のコミックスは約1800億円、電子コミックスは約1850億円と逆転する。
紙と電子を合わせたコミック誌は同11・7%減の1047億円。電子コミック誌の規模は31億円で、紙のコミック誌(1016億円)の3%程度でしかないため、紙の落ち込みをカバーするには至っていない。
16年は紙のコミックスが過去最大のマイナスを示し、中でも既刊の落ち込みが大きかった。電子コミックでは圧倒的に過去の作品が売れており、絶版となったような作品については電子が掘り起こしに成功している。現在も刊行が続いている作品については、作品特性やジャンルごとで動きが異なり、少年向け人気作は最新刊でも電子の割合は10%に満たないものが多く紙が優勢になっている。
一方、デジタル発の作品や、紙ではあまり売れていなかった作品が電子ストア内での仕掛け販売などによりヒットし、紙の売上に波及する例が、青年向けや女性向けジャンルを中心にみられた。出版科学研究所は、「改めて紙と電子双方の役割を明確にし、電子で売れているものを紙にフィードバックするという相互連携がより一層必要とされる」と指摘している。
メンテ

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