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紙と電子のコミック市場、0・4%減の4437億円/出版科研調べ
日時: 2016/04/01 20:19:28
情報元: 日書連



出版科学研究所が発行する『出版月報』2月号は、「コミック市場2015」を特集。これによると、昨年の紙と電子を合わせたコミック市場規模は、前年比0・4%減少して4437億円。紙は同8・4%減の3268億円、電子は同31・8%増の1169億円となった。

出版科学研究所では2015年(1〜12月)から紙のコミックス(単行本)・紙のコミック誌に電子コミックス・電子コミック誌を加えて「コミック市場規模」として調査結果を発表。15年のコミック市場全体(紙+電子)の販売金額は4437億円で、前年比0・4%減少した。紙のコミックが同8・4%減の3268億円と、過去最大の落ち込みを記録したのに対し、電子コミックは同31・8%増の1169億円と大きく伸長しており、紙の減少を電子が補完して、トータルのコミック市場は前年比で僅かな減少にとどまった。

〔既刊が伸び悩み3年ぶりのマイナス/紙のコミックス〕
紙のコミック市場概況をみると、コミックスの推定販売金額は前年比6・8%減の2102億円で、3年ぶりのマイナスとなった。販売部数は同8・6%減の4億250万冊。既刊の伸び悩みが不振の大きな要因となっており、13年は『進撃の巨人』(講談社)、14年は『七つの大罪』(同)、『東京喰種(トーキョーグール)』(集英社)など映像化で大きく伸びた作品が多かったが、15年は『キングダム』(集英社)などのヒットはあったものの、市場全体を盛り上げるような作品が不在で、前年が好調だった反動もありマイナスになった。また、電子コミックが映像関連のヒット作を中心に伸びたことも、紙の売上に影響したとみられる。
平均価格は同11円(2・2%)増の522円。返品率は同1・9ポイント増の30・3%と、30%台に突入した。新刊点数は同1・1%減の1万2562点。内訳は雑誌扱いコミックスが同2・4%減の9701点、書籍扱いコミックスが同3・5%増の2861点だった。
人気作品をジャンル別でみると、少年向けは『ハイキュー!!』(集英社)が、第2期テレビアニメ放映や劇場版アニメ公開などメディアミックスが奏功して好調な売行きを示した。青年向けは『キングダム』がテレビバラエティで取り上げられたのを機に、爆発的な伸びを見せた。少女・女性向けは、作品の舞台となった長野県松本市での仕掛け販売を行った『orange』(双葉社)が好調だった。また、無料Webコミックマガジンなど、Web上の媒体から生まれた作品のヒットも相次いでおり、『ヲタクに恋は難しい』(一迅社)は無料投稿マンガサイト「pixivコミック」で掲載されて人気を集め、15年5月に第1巻を刊行、16年1月で累計50万部を突破している。
コミック文庫は、販売金額が同32・2%減の31億円、販売部数は同32・9%減の442万冊で、ともに3割以上の大幅なマイナスに。新刊点数は同9・2%減の278点と8年連続のマイナスで、市場規模が大幅に縮小。既刊の掘り起しを狙ったコミック文庫の需要は、電子コミックスへと切り替わってきている。
コンビニエンスストアの占有が高い廉価軽装版の販売金額は同14・6%減の171億円、販売部数は同15・8%減の3485万冊。新刊点数は同8・0%減の1243点となった。

〔金額・部数とも1割以上の大幅減/紙のコミック誌〕
紙のコミック誌の推定販売金額は前年比11・2%減の1166億円、販売金額は同12・5%減の3億4788万冊。ともに20年連続マイナスで、1割以上の落ち込みは初めてとなった。
刊行形態別では、月刊誌は販売金額が同9・8%減の585億円、販売部数は同11・1%減の1億2563万冊。週刊誌は販売金額が同12・5%減の581億円、販売部数は同13・3%減の2億2226万冊だった。読者対象別に販売金額をみると、子ども向けは「妖怪ウォッチ」ブームが去り同11・2%減の608億円、大人向けは同11・1%減の559億円でともに大幅減。電子書籍ストアでの無料試し読みなど、コミック作品への新たな接点が確立され、コミック誌の存在感が薄まってきている。
15年12月末時点での月刊誌・週刊誌を合わせた発行銘柄数は同6・0%減の237点。21誌が休刊する一方、創刊は5点で、とがった作品を集めた『少年マガジンエッジ』(講談社)や、萌え系4コマ誌『コミックキューン』(KADOKAWA)などが創刊した。
推定発行金額は同9・4%減の1900億円、推定発行部数は同10・7%減の5億3152万冊。発行部数の内訳をみると、月刊誌は同9・8%減の2億2767万冊、週刊誌は同11・3%減の3億385万冊だった。週刊誌は人気連載作品の完結が相次ぎ、『週刊少年ジャンプ』(集英社)が発行部数240万部を割ったほか、少年向け各誌は軒並み1年間で1割の部数減となった。
平均価格は同6円(1・7%)増の358円。内訳は月刊誌が同7円(1・5%)増の476円、週刊誌が同3円(1・1%)増の269円。消費税増税が一段落し定価改訂は少なかったが、特別価格等で平均価格の上昇が続いている。

〔電子で読む習慣が読者に徐々に浸透/電子コミック〕
電子コミック市場は、電子コミックスの販売金額が前年比30・3%増の1149億円、電子コミック誌が同300・0%増の20億円だった。紙と電子を合算したコミックスの市場規模は同3・6%増の3251億円、紙と電子を合算したコミック誌市場規模は同10・0%減の1186億円。
電子コミックスは、映像化作品・メディア紹介作品の好調や、無料試し読み、バナー広告の効果で伸長。また電子コミック誌は、講談社が15年1月から全コミック誌の電子配信を順次スタートしたこと、大手出版社による週刊少年コミック誌の電子アプリが躍進したことで大きく伸びた。出版科学研究所は、「読者が電子コミックに接する機会が格段に増えたことで、電子でコミックを読む習慣が付いた読者が着実に増えている」と指摘している。
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