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4・5%減の1兆6065億円/2014年出版物販売金額/出版科研調べ
日時: 2015/02/26 21:59:17
情報元: 日書連

2014年の出版物の推定販売金額は前年比4・5%減の1兆6065億円と10年連続の前年割れとなり、09年の4・1%減を上回って、1950年の統計開始以来最大の落ち込みとなったことが出版科学研究所の調べで分かった。昨年4月の消費税増税によって読者の出版物への支出が抑制され、単発需要の強みを発揮して健闘してきた書籍が一気に落ち込んだ。さらに、若者はスマートフォンなどに時間を奪われ、雑誌の需要減退に拍車をかけたとみられる。
書籍の推定販売金額は前年比4・0%(307億円)減の7544億円と8年連続のマイナス。推定販売部数は同4・8%減の6億4461万冊と販売金額以上の落ち込みとなった。
消費税増税による購買マインドの冷え込みの影響が大きく、文庫本など廉価な商品にまで読者の買い控えが顕著に表れ、年後半になっても回復しなかった。全体を牽引する売れ筋商品が乏しく、ベストセラー商品の部数水準も低かった。同研究所の年間単行本総合ランキングでミリオンセラーはゼロ。集計対象外の実用書で唯一、『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』(アスコム)が100万部に到達した。
新刊点数は7万6465点で同1・9%減。内訳は
取次仕入窓口扱いの新刊が同1・6%減の5万5162点。注文扱い新刊は同2・6%減の2万1303点。取次仕入窓口経由は文庫本、児童書、図鑑などは点数増となったが、11〜13年にかけて激増した震災関連書が一気に200点以上も減少。新書の刊行も抑制されたことが影響した。
平均価格は、新刊が同2・0%増の1142円と3年連続上昇。文庫本など廉価版の発行部数の減少が要因。出回りは同1・2%増の1116円と上昇に転じた。
返品率は同0・3ポイント増の37・6%と悪化。取次各社が新刊配本の引き締めを積極的に行ったものの、それを上回る販売状況の悪化で、上昇に転じた。
ジャンル別では、文芸書の不振が目立った。本屋大賞受賞作『村上海賊の娘』(和田竜、新潮社)、『女のいない男たち』(村上春樹、文藝春秋)、『銀翼のイカロス』(池井戸潤、ダイヤモンド社)など一部人気作家の作品や話題作は売れたものの、裾野の広がりは見られなかった。
一方、『人生はニャンとかなる!』『人生はワンチャンス!』(ともに水野敬也・長沼直樹、文響社)が2点で132万部になり、渡辺和子、矢作直樹がロングで売れるなど、自己啓発書や人生訓が引き続き好調だった。
書籍市場の低迷について、出版科研は「スマートフォンなど他メディアへの接触時間が増え、読書時間が減るというライフスタイルの変化とともに、14年は増税が追い打ちをかけ、『本を買って読む』ことへの読者の意欲の低下が顕著に感じられた」と分析している。
雑誌の推定販売金額は前年比5・0%(452億円)減の8520億円と17年連続のマイナスとなった。内訳は、月刊誌が同4・0%減の6836億円、週刊誌が同8・9%減の1684億円。月刊誌にはコミックスが含まれており、コミックスとムックを除く定期誌の販売実績は約7%の落ち込みとなる。
推定販売部数は同6・4%減の16億5088万冊。内訳は、月刊誌が同5・3%減の11億5010万冊、週刊誌が同8・9%減の5億78万冊となり、週刊誌の落ち込みが大きい。
平均価格は同1・5%増の532円。内訳は、月刊誌が同1・2%増の607円、週刊誌が同0・6%増の346円。推定発行部数は月刊誌・週刊誌合計で同4・5%減の26億6832万冊。推定発行金額は同3・2%減の1兆4193億円。
返品率は同1・2ポイント増の40・0%と、40%台に達した。縮小均衡に陥ることを懸念して送品を絞りきれなかったことが原因と見られる。
創復刊点数は同1点増の87点。3年連続で100点を下回った。創刊部数は同14・1%増。また、休刊点数は同45点増の169点と、創刊点数を大幅に上回った。休刊部数は同196・1%増。ムックは同1・4%減の9336点と点数増に歯止めがかかった。定期誌の不振を補うため強気に刊行されてきたムックだが、販売効率の悪化を懸念して点数を抑制する出版社も出てきた。発行銘柄数は同2・0%減の3179点となり、8年連続で減少した。
部門別動向を見ると、女性誌は同11・9%減と過去最大の落ち込みとなった。20代向けは大部数の主要誌が不振な上、インフォレストの「小悪魔ageha」をはじめギャル誌が一気に休刊し、若い女性向けの雑誌のボリュームが急激に縮小した。付録付き雑誌も大幅に部数を減らし、宝島社の女性誌で付録を外す動きが出た。「with」「MORE」「non‐no」は付録付き本誌と付録無し増刊を同時発売した。30歳前後のアラサー向けは好調なものが目立った。
男性誌は同0・8%の微減と健闘。ファッション誌では10代〜20代向けストリートファッション誌が苦戦し、「Safari」「OCEANS」といった海外モデルを起用する30代〜40代向け雑誌が堅調だった。
なお、電子書籍の市場規模が拡大傾向にあることから、出版科研は「紙の出版と電子出版の両方のデータを合わせて見ていかないと、出版市場の趨勢を正しく捉えられなくなってきた。今後は電子書籍、電子コミック、電子雑誌など分野別の月次統計調査を出版業界をあげて行う必要がある」と提言している。
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