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文庫市場2・5%減の1293億円/『出版月報』13年文庫本レポート
日時: 2014/05/01 19:57:04
情報元: 日書連

出版科学研究所発行の『出版月報』3月号は「2013年文庫本マーケットレポート」を掲載。これによると、昨年の文庫本(コミック文庫は除く)の推定販売金額は前年比2・5%減の1293億円で、3年ぶりのマイナスとなった。同レポートから文庫市場の動向を紹介する。

2013年の文庫本市場は3年ぶりのマイナス成長になったが、推定販売金額が1300億円の大台を割ったのは2003年以来のこと。推定販売部数は前年比3・6%減の2億459万冊だった。
ミリオンセラーが8点誕生するなど売行き上位にメガヒット作品が並んだものの、売行き自体は二極化が進んで中位以下の落ち込みが厳しくなっている。また、上り調子の売行きを続けてきたライトノベル市場も陰りが見え始めており、全体的な販売部数水準は前年より低下している。
13年末に映画公開された百田尚樹『永遠の0』(講談社文庫)は年間を通して売れ続け、420万部の記録的なヒットになった。人気テレビドラマ「半沢直樹」原作の池井戸潤『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』(ともに文春文庫)も2冊合計で260万部に到達した。
ミリオン作品はこの他、東野圭吾『真夏の方程式』(文春文庫)『プラチナデータ』(幻冬舎文庫)『疾風ロンド』(実業之日本社文庫)湊かなえ『夜行観覧車』(双葉文庫)越谷オサム『陽だまりの彼女』(新潮文庫)で、文庫書き下ろしの『疾風ロンド』以外は全て映像化作品。人気作家の作品を、映像化をきっかけに文庫化することで大きな売上に結びつけている。
多くの読者は、高価な単行本を買わずに安い文庫になるのを待つという、文庫化待ちの傾向を強めており、出版科学研究所は「文庫本は新刊、話題書を売り伸ばす単行本的な色彩が強まり、宣伝、拡販強化、売れない商品の淘汰(押し出し返品)が進み、広大な作品群をいつでもどこでも安く入手できる文庫本の良さが変容しつつある」と指摘している。
推定出回り部数は3億4333万冊(前年比0・1%増)とほぼ前年並み。返品率は、2000年代は40%を超えることが多かったが、2010年以降、大手取次による送品抑制を伴った返品減少対策が本格化したことで大幅に改善。しかし、ヒット作とそれ以外の商品の格差が大きく、返品率は上昇基調が続いている。
出回り平均価格は前年より1・1%(7円)増の632円。新刊平均価格は同1・1%(7円)増の639円だった。販売部数の大幅伸長は見込めない中で、設定価格が安い文庫本は少しずつ価格を上昇させている。
新刊点数(コミック文庫を除く)は前年比0・4%(35点)増の8487点と年間刊行点数は過去最多を更新した。メインの国内小説は5580点で、同3・7%(201点)増加。有力文庫の刊行状況を見ると、各社がほぼ例年並みとなる中で、徳間文庫が44点減少した。一方、中小出版社の文庫は刊行点数の多寡が目立っており、数年間にわたって新刊の刊行が停止し、事実上の廃刊となっている例も少なくない。
創刊文庫は、日経文芸文庫(日本経済新聞出版社)、フルール文庫、富士見新時代小説文庫(ともにKADOKAWA)、文春ジブリ文庫、文春学藝ライブラリー(ともに文藝春秋)、ルナブックス(主婦の友社)、ベリーズ文庫(スターツ出版)など16レーベルだった。
右肩上がりの成長曲線を描いてきたライトノベルは、販売金額が前年比12・0%減の250億円規模となった模様で、出版科学研究所が市場の観測を始めた04年以降、初めてマイナス成長を記録した。前年に大ヒットを記録した川原礫『ソードアート・オンライン』(電撃文庫)のような作品が不在で、売上増に結びつくアニメ化作品の本数も少なかったことが影響したとみられる。
メンテ

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