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責任販売制、課題は商品選定/講談社、小学館、35ブックス
日時: 2009/12/22 11:56:01
情報元: 新文化

業界4団体で構成する出版流通改善協議会は12月9日、東京・神楽坂の日本出版クラブ会館で「再販関連」会員説明会を開き、講談社、小学館、「35ブックス」による責任販売の事例報告を行った。責任販売における大手2社の最重要課題は「対象商品の選定」で、今後は買切り・時限再販・高マージンという手法の試行にも前向きに取り組む姿勢をみせた。さらに、責任販売の取組みは継続が大事として、説明に当たった3社は来年以降も試行を重ねていくことを報告した。

責任販売について、初めに講談社の岩崎光夫取締役が説明に当たった。創業100周年記念企画として「CDえほん まんが昔ばなし」の5巻セットを対象に6月から受注活動して、2万7000セット強の注文が集まったことを報告した。「1万5000〜2万部かと思っていたが、最も多い書店で600セット、100セット以上が40法人以上あった」という。

10月16日の発売から約1カ月半の売行きについては、100セット以上の申し込みがあった法人(外商中心)は80%の消化率で、店売は40%半ば。全体としては六割超の状況という。

次の責任販売企画については同タイトルの第2弾セット(全五巻)を来年6月に刊行する予定で、書店マージン35%、1年の時限再販・歩安入帳などの条件を同様に設定する。岩崎取締役は「どういう企画で実施するかが一番の悩みどころ。そのあとにマージンや仕組みづくりという順序で考えないと。今後は、違う企画で継続していきたい。書店さんからは『買切りでもいいのでは』という意見が上がっているが、その場合は40%のマージンで時限再販にすれば、すっきりしたビジネススキームになるかもしれない」と語った。

続いて、小学館の市川洋一マーケティング局ゼネラルマネージャーが登壇。同社はRFIDを用いて責任販売制と委託制を併用しつつ、返品減少と書店の高マージン施策にいち早く取り組んでおり、今年は4タイトルで実施した。一般書の『脳で旅する日本のクオリア』は責任販売で2万1000部(書店3200軒)、委託制で6000部(書店2800軒)の注文を獲得。「8000〜1万部とみていたが、予想以上の反響」という。実売率については五割程度とみている。

『星の地図館・太陽系大地図』は責任・委託合計で2万部を受注し、実売率は約5割。11月に発売した『世界大地図』は責任販売2万部(出庫1万9000部、委託1万部(同6000部)を獲得した。同書から、書店から上がった「チラシだけで受注は難しい」という意見を反映して、組見本を書店に配布して受注活動を支援した。

今後についても、『生活の図鑑』で責任販売と委託制の併用について検討を開始している。2月初めには実物見本を作り、書店の受注をバックアップして、3月中旬には発売する予定。同社も講談社と同様に「商品選択が悩むところ」とした。

最後に、「35ブックス」を代表して、筑摩書房の菊池明郎社長が状況を報告。搬入直前は注文が集まらなかったものの、各社各点約1000部を制作。発売後には各社が新聞広告などでピーアールしたことで、「筑摩書房で5割、いい出版社では7割を超えるところもある」と読者を中心に徐々に反応が高まっている状況を説明した。中間報告としては「8社のなかで一番実売率の低いところでも『1年かかるが売り切れる。この試みで損をだすことはない』と話している。ギリギリだが、この形も成立する」と失敗例ではないことを強調した。

今後については、2月を目途に8社で今回の取組みを総括する。ただ、筑摩書房では単独で、3月に『幕末』を対象に、買切り=時限再販(5カ月)または歩安入帳・書店マージン40%の条件で責任販売を実施する。

菊池社長は返品減少や書店の高マージン化の課題について、「大手ばかりではなく、他の出版社も工夫して提案することが来年以降も必要だと思う。『忘却の整理学』を責任販売できるかどうか、書店に相談すると、責任販売だと仕入れは委託の半分になるといわれたので、通常のやり方にした。今後は新刊も含めて、書店や取次と相談していきたい」。

同会の冒頭に挨拶した相賀昌宏委員長はポイントサービスで違反事例がみられることを指摘。「業界のルールは価格維持。これは守っていきたい。同時に、世間にはなかなか理解してもらえない部分もあるが、その視点をもちながら、両方のジレンマのなかでやっていくしかない。これが協議会の立場」と説明。最後に書協の菊池明郎副理事長も「公取委は再販制度は民民契約に基づくものと判断している。お墨つきを与えるわけではない。公取委ではなく、出版社に相談してほしい。正しい理解に基づいて、販売促進に取り組んでほしい」と訴えた。

当日はさらに小学館の早川三雄常務が「二〇〇九年 出版再販・流通白書No.12」の概要を説明した。会場には業界関係者145人が参集した。

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