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【「第1回アジア太平洋デジタル雑誌国際会議」 紙とデジタルの融合 】 日書連
日時: 2008/11/25 08:51:05
情報元: 日書連


 国際雑誌連合(FIPP)、日本雑誌協会共催の「第1回アジア太平洋デジタル雑誌国際会議」が11月13日、14日の両日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで開かれ、世界の雑誌関係者総勢528名(国内384名、海外16カ国144名)が参加。

「紙とデジタルの融合」をテーマに、世界の出版界が直面しているデジタル・ネットワーク社会における出版事業のあり方や雑誌の将来をめぐって、さまざまなディスカッション、講演が行われた。

〔かつてない変化 チャンスに/雑誌出版産業の潜在力活用を〕 同会議は13日午前8時45分に始まり、主催者を代表して雑協の村松邦彦理事長が開会あいさつ。

「この大会はアジアで初めての開催。

世界の雑誌に携わる皆様が一堂に会し、雑誌のネット社会への融合に対して現状を報告、情報を共有することは大変意義深い。

IT技術は急速な革新の途上にあり、これから大きな変化の時代が到来する。

グーテンベルク以来のことか、それ以上かもしれない。

雑誌出版は100年以上の歴史を持ち、独自の文化産業を形成してきた。

これまでに培った編集力はじめ雑誌出版の潜在力は必ず活かすことができる。

かつてない変化をチャンスに変えたい」と話した。

 FIPPのドナルド・D・カマーフェルド会長は「雑誌業界は現在、デジタルプラットフォームと紙との融合に直面している。

これは課題だがチャンスでもある。

今回の会議では世界各国から業界のリーダーと専門家を招聘している。

デジタル出版の成功事例を可能にした戦略について知識や経験を共有したい」とあいさつした。

〔Eコマースで収益構造転換/雑誌出版社のデジタル戦略〕 13日午前に行われたディスカッション「雑誌出版社のデジタル戦略 経営の視点」では、野間省伸(講談社副社長)、ジョン・ウー・キル(韓国、中央m&b社長兼CEO)、ジョン・S・ツィーザー(アメリカ、メレディス社CDO)の3氏がパネラーをつとめ、激変するメディア環境をチャンスに変える経営戦略、いかにデジタルと協調していくかについてトーク・セッションを行った。

 この中で野間副社長は、インターネットおよびモバイル・メディアの普及に歯止めがかからず、日本の雑誌業界は販売と広告という2つの収入に依存してきた従来のビジネスモデルから新たしいビジネスモデルへの転換を迫られているとの認識を示し、女性ファッション誌『ViVi』のウェブサイトを例にあげて、雑誌のブランド価値を向上させながら新たな収益を獲得するための講談社の戦略を説明した。

 野間副社長は「00年、雑誌と連動した形でサイトを立ち上げた。

雑誌と読者とを結ぶコミュニティ要素と雑誌の宣伝要素が中心で、まだ事業を手掛ける段階ではなかった。

ブランド・ビジネスをスタートしたのは04年、『ViViコーディネート・コレクション』という、本誌と連動したEコマース・サイトを始めた。

読者が本誌を見て手に入れたいと思った靴やバッグなどの商品を場所、時間に関係なく提供できるサービスを提供している。

現在は読者のネット利用状況を考慮してモバイルサイトを立ち上げ、若者ユーザーからの商品購入にもつながって急成長している。

08年度、ウェブとモバイルを合わせたViVi関連コマースの商品販売総額は11億円となり、事業を開始した04年の130倍、前年比で倍以上の伸びとなっている」と述べた。

そして、ウェブとモバイルの役割について「紙媒体に代わるコンテンツ配信メディアとしてだけでなく、紙媒体では不可能な読者との双方向性を利用した新しいツールとして利用している。

今後は読者同士をつないだり、読者からの情報発信に利用したい」として、このことが「紙とデジタルの融合」につながると指摘した。

 このほかViVi関連事業としてイベント、クレジットカード、海外ライセンスなどに触れ、「今後は従来の雑誌販売収入、広告収入に加えて第3の収入を伸ばし、雑誌の媒体価値、ブランド価値の向上につなげたい。

また、ViViで展開しているブランド事業を他誌にも広げる」と、デジタル時代の雑誌の成長戦略を語った。

〔ネットコンテンツを味方に/日本発 雑誌とデジタルの融合〕 14日午後に行われた「雑誌とデジタルの融合 日本からの発信」では、角川グループホールディングスの角川歴彦会長兼CEO、エンターブレインの浜村弘一社長が講演した。

 角川会長はテレビ放送がデジタルに完全移行する2011年には、書籍・雑誌や映画ソフト、音楽ソフト、ゲームソフトなどもデジタル化に向かわざるを得ないと指摘。

「次世代ネットワークのイメージは大容量の高速通信網という『土管』。

この土管の中をすべてのデジタル化されたコンテンツが一体となって流れ、利用者のパソコン、携帯電話、ゲーム機などの端末に届く環境が生まれるのではないか」と予測した。

 出版産業の現状については「出版界は今、成長の限界という大きな曲がり角に立たされている。

戦後60年におよぶ出版体制が制度疲労を起こしていることを多くの人たちが感じている」として、「新たな成長モデルを創出しなければ出版界に明日はない」と危機感を示した。

具体的には書籍・雑誌コンテンツのデジタル化とデータベース化を進め、あわせて顧客データベースの構築も必要とした。

 最後に「出版業界が大同団結して新しいインターネット向けのプラットフォームを作る必要がある。

競争は編集力、マーケティング力、営業力ですればいい。

変化に対応するための時間は残り少ない」と訴えた。

 続いてエンターブレイン・浜村社長が具体的施策を説明。

「インターネットの影響で情報誌の部数は低迷しているが、インターネットを敵視しているだけでは部数がさらに下がるだけ。

逆に味方につけることにより、雑誌の媒体価値を上げ、新たな収益をあげることができる。

紙媒体が次世代に生き残る道はそこにある」と、発想の転換を力説した。

 その鍵となるのは動画コンテンツの活用。

「当社ではゲーム雑誌を数誌発行しているが、ゲームの攻略記事を掲載するだけでは他誌との差別化が図れない。

そこで2次元バーコードとURLを付けて、ネットに飛んで動画を見ることができるようにしている。

さらに、ゲームプレイの動画を見て実際にゲームが欲しくなったユーザーのために、ワンクリックでECサイトに飛んで購入することができるサービスも行っている」と述べた。

 また、ゲーム雑誌の広告について「タイアップ広告はどの雑誌にも載っているが、そこにURL、二次元バーコードを載せることで動画投稿サイトYou Tubeに飛んで動画を見ることができるようにしている。

You Tubeというと著作物が勝手にアップロードされているので出版社の敵と考えている人が多いが、逆に利用してメリットを享受したい。

You Tubeを使うメリットは動画サーバーのコストを下げることができること。

また、You Tubeに動画をアップロードすれば、雑誌を通じて見に来る人のほか、You Tube独自検索で見に来る人もいる。

つまり広告をよりたくさんの人に見てもらえるということで、広告効果を上げ媒体価値を高めることができる」として、You Tubeは利用の仕方次第で敵にも味方にもなるとの考えを示した。


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