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【 書店の万引対応を講演 】 日書連
日時: 2006/11/13 16:04
情報元: 日書連

【 書店の万引対応を講演 】
 全国万引犯罪防止機構(理事長・河上和雄駿河台大学教授)は11月2日午後2時に東京厚生年金会館で役員増補を議題とした臨時総会を開催し、4名の理事を承認した。

終了後、同機構の加藤和裕理事(愛知県書店商業組合理事・万引対策特別委員長、名古屋市・三洋堂書店代表取締役)と、日書連・下向磐理事(東京都書店商業組合副理事長、府中市・分梅書店社長)が記念講演を行った。

〔小売業全体で損害賠償請求の取り組みを/加藤氏〕 加藤氏は、三洋堂書店で導入している「店内万引に対する損害補償制度」について経過を報告した。

導入の理由について加藤氏は「万引は非常に成功確率の高い犯罪。

もし捕まっても商品を返せば済んでしまい、ローリスク・ハイリターンだ。

これをミドルリスクにして、謝れば済むのではないようにしたいと考えた」と説明。

実施に当っては、万引を発見したら警察に通報すること、被害商品の弁償だけでなく損売賠償請求する場合もあることを店内で告知。

また損害請求の根拠は、事件による従業員や警備員の拘束時間分の人件費とした。

 万引犯を捕まえた場合は、1週間以内に支払いを求める請求書を即日発送。

支払いがなければ第2、第3の請求書を送り、4回目には、支払いがない場合は法的措置も検討する旨記載した請求書を内容証明郵便で送付する。

1回目の請求で支払った人は68%、2回目が12%と、2回以内で支払う人が8割に達している。

05年度は8カ月間で31件15万5740円を回収、平均単価は5024円。

06年度上半期は24件13万9638円を回収し、平均単価は5818円となっている。

 同社全体のロス率は、04年8月期で1・11%だったが、05年3月期で0・91%、06年3月期は0・76%に減少した。

加藤氏は、損害賠償請求も辞さない姿勢を打ち出したことで、警備効果が上がったと分析。

「万引すれば実費請求されるのが当たり前という社会にできないか。

小売業全体で取り組んでいただきたい」と述べた。

〔万引した子どもにどう向き合うかが重要/下向氏〕 下向理事は、平成16年2月に自店で起こった万引事件と、その裁判の顛末について語った。

 下向氏は始めに、事件がなぜ裁判になったのか、発生時点までの書店における万引問題の背景を説明。

平成12年に日書連は万引問題実態調査を実施し、新古書店の進出と周辺書店での被害増加が浮き彫りになった。

また東京組合は平成15年12月から翌年3月にかけて、東京都と警視庁の後援で万引防止キャンペーンを展開。

万引には損害賠償を請求する場合があると記載したポスターを店頭に掲示し、大きな効果をあげた。

「新古書店で換金するシステムと、損害賠償請求が万引に適用していけるかの2つが大きなポイントになっていた。

万引事件はそのキャンペーンの真っ只中で起きた」と下向氏。

 分梅書店で27歳の無職女性が3冊の本を万引したのを従業員がつかまえ、警察に通報。

女性が盗んだ本を新古書店で換金していたことが分かり、万引に対する司法判断を仰ごうと告訴することにした。

裁判では、女性が取調べから解放されたその足でまた万引に行って盗品を売ったことが明らかになった。

下向氏は「ショックを受け、社会の厳しい姿勢が必要だと痛感した。

7月9日に懲役1年執行猶予3年の実刑判決が下ったが、相手方の弁護士や裁判長が女性に『働いて自分の生活を立てなさい。

それがあなたにとって大事なことだ』と諭したのを聞いて、裁判をやって良かったと思った」と話した。

 その後損害賠償請求について組合で議論となり、万引の損害に関する社会的判断を得たいとのことから、女性に対し民事訴訟を起こすことを決定。

盗まれた本の金額の他、警察の事情聴取で従業員が時間的拘束を受けたことによる利益の損失や弁護士費用など、総額約23万円を請求することにした。

これに対し相手方弁護士から和解の申し出があり、弁護士費用を除く金額を女性が支払うことで和解に応じた。

下向氏は事件への反響について「平成12年の頃に比べ、万引は犯罪であり厳しい態度をとるのは当然だという方向に世の中の見方が大きく変わってきた」と指摘した。

 最後に下向氏は最近のエピソードを披露。

「当店を含め4軒の店で万引した少年が捕まったが、万引と向きあい乗り越えてほしいと思ってその子に宿題を出した。

『本はあなたを変える力を持つ。

そういう本にあなたが出会えていないのは残念だ。

この本を読んで話を聞かせてほしい』と言って『あなたが世界を変える日』という本を渡した。

12歳の少女が国連の地球環境サミットで行なったスピーチを収めていて、薄い本だけれども受ける内容は衝撃的だ。

少年は素晴らしい感想文を書いてきた。

私はこの子を見守っていきたいと思う。

万引した子どもにどう向き合っていくかは書店にとって大変重要なことではないか」と結んだ。

http://www.shoten.co.jp/nisho/bookstore/shinbun/view.asp?PageViewNo=5422
から引用
メンテ

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