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紙と電子のコミック市場23・0%増の6126億円/『鬼滅の刃』と巣ごもり需要で過去最大に/出版科研調べ
日時: 2021/04/15 18:42:16
情報元: 日書連

出版科学研究所が発行する『出版月報』2月号は、「コミック市場2020」を特集。これによると、昨年の紙と電子を合わせたコミック市場規模は、前年比23・0%増の6126億円。紙は同13・4%増の2706億円、電子は同31・9%増の3420億円でともに大きく伸長した。

2020年のコミック全体(紙+電子)の推定販売金額は前年比23・0%増の6126億円で、3年連続のプラスに。ピークだった1995年の5864億円を抜き、78年の統計開始以来過去最大の市場規模となった。内訳は、紙のコミックス(単行本)が同24・9%増の2079億円、紙のコミック誌が同13・2%減の627億円、電子コミック(電子コミック誌含む)が同31・9%増の3420億円。新型コロナウイルス感染拡大に伴い巣ごもり需要が拡大、余暇時間の増加で手軽に楽しめるコミックが注目され、紙も電子も大幅に売行きを伸ばした。
20年のトピックとしては、コロナ禍による緊急事態宣言下の5月に書店店頭販売冊数は前年同月を5割以上上回る凄まじい売上を記録。大ヒットを続けていた『鬼滅の刃』(集英社)をはじめとしたコミックに読者が触れ、その面白さから一気に需要が高まった。『鬼滅の刃』は10月にアニメ映画が公開され、映画興行収入歴代トップを塗り替える爆発的なヒット。最終巻の23巻は初版395万部で刊行され、シリーズ累計発行部数は1億2千万部に到達。老若男女問わず幅広い読者の人気を集めたことが躍進につながった。また「鬼滅」を求める読者が書店に足を運んで店頭が賑わい、他のコミックの売行きを伸ばしたこともコミック市場全体を底上げした。

【映像化作品ヒットで過去最大の伸び/紙のコミックス】
紙のコミック市場概況を見ると、コミックスの販売金額は同24・9%増の2079億円で伸び幅は過去最大になった。内訳は、雑誌扱いコミックスが同27・4%増の1876億円、書籍扱いコミックスが同4・7%増の202億円。巣ごもり需要も相まって『鬼滅の刃』をはじめ映像化作品がヒット。過剰な送品を抑制したことなどから返品率は23・1%と同7・2ポイントも改善した。
平均価格は同0・7%(4円)減の553円で、内訳は雑誌扱いコミックスが同0・7%(4円)減の533円、書籍扱いコミックスが同3・1%(23円)増の755円。雑誌扱いコミックスは大手出版社の価格値上げが一巡し、価格の安い少年向けコミックスのシェアが伸びたことで微減。書籍扱いコミックスは、KADOKAWAの新刊が前年に続き値上げしたことに加え、『完全版ピーナッツ全集』(河出書房新社)や『100年ドラえもん』(小学館)が発売されたこともあり大きく上昇した。
新刊点数は同134点増の1万2939点となった。内訳は、雑誌扱いコミックスが同272点減の9023点、書籍扱いコミックスが同406点増の3916点。
売行きの動向を見ると、少年向けコミックスは映像化作品のヒットが多く絶好調だった。特に集英社のジャンプコミックスは、『ハイキュー!!』、『約束のネバーランド』などの大ヒット作品が完結したものの、アニメ化で『鬼滅の刃』に次ぐ勢いを見せる『呪術廻戦』や、Webコミック誌「ジャンプ+」発で初めて初版100万部に達した『SPY×FAMILY』など新たなヒット作が成長している。講談社では『進撃の巨人』、『五等分の花嫁』、『炎炎ノ消防隊』などがアニメ放映に連動して売行きを伸ばした。小学館の『名探偵コナン』は映画公開が延期となったが、人気キャラ・安室透を主人公にしたスピンオフ『名探偵コナン警察学校編』がヒットした。
青年向けは『キングダム』(集英社)や『宇宙兄弟』(講談社)などが前年に続きヒット。少女・女性向けでは『ミステリと言う勿れ』(小学館)、今年7月に実写映画公開が予定されている『ハニーレモンソーダ』(集英社)などが人気を集めた。
書籍扱いコミックのうちコミック文庫の推定販売金額は同7・8%減の14億円、販売部数は同4・6%減の180万冊。新刊点数は同51点減の80点だった。

【販売金額、部数ともに2桁減が続く/紙のコミック誌】
コミック誌の販売金額は同13・2%減の627億円、販売部数は同13・6%減の1億7229万冊で、ともに近年は2桁減が続いている。
販売金額の読者対象別の内訳を見ると、月刊誌・こどもが同13・4%減の103億円、月刊誌・大人が同17・9%減の193億円、週刊誌・子どもが同9・4%減の222億円、週刊誌・大人が同12・1%減の109億円。付録やグラビア人気で売行きを伸ばす号はあるが、継続して購読する読者は年々減少している。ほとんどの雑誌が部数を減らしており、推定発行部数は同15・7%減の2億8671万冊と激減。部数の減少で返品率は同1・3ポイント減の43・2%と10年ぶりに改善した。
コミック誌全体の平均価格は、同0・8%(3円)増の385円。内訳は月刊誌が同1・6%(8円)増の518円、週刊誌が同2・0%(6円)増の300円。創刊点数は同3点減の1点、休刊点数は同2点減の8点。発行銘柄数は20年末時点で192点で同7点減となった。
コミック誌の動向をみると、『週刊少年ジャンプ』は「鬼滅の刃」関連付録をつけた号が好調で、最終話掲載号は完売。集英社は自社雑誌に「鬼滅」関連付録をつけ、『マーガレット』が完売するなど、売行きを伸ばした。『週刊少年サンデー』は「名探偵コナン警察学校編」掲載号が好調だった。

【販売金額は31・9%増の3420億円】
電子コミック市場は、同31・9%増の3420億円。外出や書店の営業が自粛される中、テレビCMやSNSなどへの外部出広を積極的に行った電子コミックストアはユーザー数が増加。さらにユーザー1人あたりの購入金額も増えた。
トレンドとしては、動画配信サービスの利用者がコロナ禍で急増したこともあり映像化作品が特に好調だった。ジャンルでは「異世界もの」が引き続き人気。年々アニメ化される作品も増え、派生ジャンルも多岐にわたるなど、一過性のブームを飛び越え1つのジャンルとして定着している。
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