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1・0%の1兆2237億円/2020年紙の出版物販売額
日時: 2021/02/19 21:09:56
情報元: 日書連

出版科学研究所は2020年の出版物発行・販売概況を発表した。紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比1・0%(123億円)減の1兆2237億円で16年連続の減少となったが、減少幅は大きく縮小した。販売金額の内訳は、書籍が同0・9%減の6661億円、雑誌が同1・1%減の5576億円。電子出版は同28・0%増の3931億円と大きく伸長し、紙と電子を合算した出版市場は同4・8%増の1兆6168億円と2年連続プラスになった。
新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛で在宅時間の増加、娯楽の制限など生活様式の大きな変化が起こり、読書の需要が高まったことと、コミックス『鬼滅の刃』(集英社)の爆発的なヒットが、出版市場を底上げした。4月の緊急事態宣言発令後に1400店を超える書店が一時休業を余儀なくされたが、取次調査による5~12月期の書店店頭の販売金額は全て前年を上回った。また『鬼滅の刃』はコミックスだけでなく、書籍のノベライズ作品や関連付録を付けた雑誌など、出版物全体に販売効果が波及した。
書籍の推定販売金額は前年比0・9%(62億円)減の6661億円。3月に始まった学校一斉休校を機に、学参、児童書が急激に売上を伸ばし、年間を通しても好調だった。リモートワークの導入に伴い、ビジネスやコンピュータの実用書も売行きを伸ばした。このほか文芸書、ゲーム攻略本が前年を上回るなど健闘したジャンルが多かった。
新刊点数は6万8608点で、同4・6%(3295点)減と大きく減少した。新刊点数が7万点を下回ったのは01年以来。内訳は、取次仕入窓口経由が同3・7%減の4万7589点、注文扱いが同6・5%減の2万1019点。コロナ禍で制作中止・延期となった書籍が多かった。
出回り平均価格は、同1・4%(16円)増の1198円と7年連続で上昇。新刊平均価格は同0・8%(10円)増の1207円だった。金額返品率は33・0%で同2・7ポイント改善した。2ポイント以上の改善は04年以来。
ジャンル別動向を見ると、文芸書は、本屋大賞受賞の凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)をはじめとした文学賞受賞作品や、東野圭吾、池井戸潤、村上春樹など人気作家の新刊が売上を牽引。ビジネス書では19年刊行の『FACTFULNESS』(日経BP発行/日経BPマーケティング発売)が紙版で84万部と好調を持続した。文庫本は、カミュ『ペスト』(新潮文庫)や五木寛之『大河の一滴』(幻冬舎文庫)など、コロナ禍を機に改めて注目され、ヒットする既刊が目立った。
雑誌の推定販売金額は同1・1%(61億円)減の5576億円。内訳は、月刊誌が同0・5%(23億円)増の4662億円、週刊誌が同8・5%(85億円)減の913億円。月刊誌は97年以来のプラスとなり、内訳を見ると定期誌は約9%減、ムックは約14%減だったが、コミックス(単行本)が約24%増と好調でプラス転換に貢献した。コミックスは『鬼滅の刃』の桁違いの伸びに加え、他にもアニメ化作品などヒットが多く、大幅に伸長した。
推定販売部数は同2・2%減の9億5427万冊。内訳は、月刊誌が同1・0%増の7億1170万冊、週刊誌が同10・4%減の2億4257万冊。平均価格は同0・3%(2円)増の591円。金額返品率は同2・9ポイント減の40・0%。内訳は月刊誌が同3・6ポイント減の39・5%、週刊誌が前年同率の42・3%。月刊誌はコミックスの返品率が大幅に改善し、7年ぶりに40%を下回った。
創復刊点数は同15点減の43点と、3年連続で過去最少を更新した。休刊点数は同29点減の98点。『東京ウォーカー』(KADOKAWA)、『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)など有力誌の休刊が相次いだ。不定期誌の新刊点数は、増刊・別冊が同291点減の2975点、ムックは同1004点減の6449点。1号を1点とした付録添付誌数は同1009点減の1万302点だった。
電子出版の市場規模は同28・0%(859億円)増の3931億円。内訳は、電子コミック(コミック誌含む)が同31・9%増の3420億円、電子書籍が同14・9%増の401億円、電子雑誌が同15・4%減の110億円。新型コロナ感染拡大に伴う巣ごもり需要でユーザー数が大幅に増えたことが市場拡大に寄与した。コミックは『鬼滅の刃』をはじめとする映像化作品が大きく牽引。書籍は、ライトノベルやビジネス書の人気が高く堅調に成長。電子化を解禁する作家・作品も増加している。雑誌は、NTTドコモの定額制読み放題サービス「dマガジン」の会員数減少が続き、3年連続の2桁減。
紙と電子の出版市場を合わせると1兆6168億円、同4・8%増。市場全体における電子出版の占有率は24・3%で同4・4ポイント増加した。
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