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19年文庫本市場/4・8%減の901億円/大ヒット作の登場で減少幅縮小
日時: 2020/06/24 18:41:37
情報元: 日書連

出版科学研究所発行の『出版月報』3月号は「文庫本マーケット2019」を特集。これによると、昨年の文庫本(コミック文庫を除く)の推定販売金額は前年比4・8%減の901億円。14年以降毎年5~6%のマイナス幅が続いていたが、わずかに縮小した。同特集から文庫市場の動向を紹介する。

?『十二国記』シリーズが大ヒット
2019年の文庫本市場の推定販売金額は901億円、前年比4・8%減。14年から18年まで5~6%の減少が続いていたが、19年は小野不由美のファンタジー『十二国記』(新潮文庫)の18年ぶりの新刊発売などメガヒット作品が登場し、減少幅は抑えられた。
推定販売部数は同6・1%減の1億3346万冊で、販売金額は平均価格の上昇が寄与したものの、冊数ベースでは金額以上の落ち込みが続いている。
新刊点数は同7・1%(564点)減の7355点で、5年連続で減少。減少幅も前年の2・7%減から大幅に拡大した。19年に明確な点数減の方針を打ち出した出版社はなかったが、KADOKAWA(228点減)、文芸社(65点減)、講談社(54点減)、中央公論新社(36点減)、集英社(32点減)、宝島社(30点減)、東京創元社(27点減)、幻冬舎(26点減)など大手・中堅各社で減少した。KADOKAWAはライトノベル系レーベルの点数が大きく減少している。点数増となったのは、オーバーラップ(23点増)、コスミック出版(14点増)、文藝春秋(11点増)など。
19年の創刊文庫は8シリーズだった。「LINE文庫」「LINE文庫エッジ」(いずれもLINE発行/日販アイ・ピー・エス発売)は、8月にLINEが開設した小説プラットフォーム「LINEノベル」と連動した企画で話題になった。「ハヤカワ時代ミステリ文庫」は、翻訳書が中心の早川書房が時代小説とミステリを融合させたレーベルとして創刊した。
新刊推定発行部数は同7・7%減。新刊1点あたりの部数は1万1千冊で、前年より1千冊減少した。新刊の部数も14年以降、5%以上のマイナスが続く。送品できる書店が年々減っていることに加え、出版社は返品対策で初版を多く刷らない傾向にある。初版部数が減少することで店頭で棚差しされ、埋もれてしまう作品が増えるという悪循環も生まれている。
新刊に既刊(重版+注文分)を加えた推定出回り部数は、同8・2%減の2億1736万冊。書店からの注文分が大きく減少し、重版部数の設定に各社が慎重になっている側面がある。
返品率は同1・4ポイント減の38・6%。12年以降は17年を除いて毎年悪化していたが、ようやく大幅に改善した。1ポイント以上改善したのは、11年以来。送品部数の大幅な絞り込みと書店でのフェア企画の見直しなどが返品減少につながった。
出回り平均価格は、同9円(1・4%)増の675円。新刊平均価格は同13円(1・9%)増の698円といずれも上昇した。19年10月に消費税の税率が8%から10%に引き上げられたことも影響してか値上げが目立っており、価格上昇トレンドは継続している。
文庫新刊の平均価格698円は、税込み(10%換算)では768円で、20年前の99年と19年の価格差を比較してみると、単行本は190円(11・5%)安、新書は75円(10%)高、児童書は50円(4・7%)高、文庫は117円(20・1%)高となり、文庫本の値上がりが顕著だった。現在は、学術文庫のみならず、エンタメ小説でも千円を超える文庫が増えており、単行本との違いや利点を打ち出しにくい状況になっている。
?映像化・人気作家作品が上位に
19年の文庫本の動向を見ると、最も話題になったのが『十二国記』シリーズ。18年ぶりにシリーズ新刊の発売が決定、『白銀の墟玄の月』が10月と11月の2回に分けて全4巻が発売になった。1巻の初版は新潮文庫では歴代最高タイとなる50万部だったが、発売後の反響が非常に大きく、新刊4点合計の部数は初版で188万部、累計で254万5千部に達した。
ベストセラー上位を映像化作品、人気作家の新刊が中心を占める傾向は19年も変わらず。年間で1番売れたのは、新海誠『小説天気の子』(角川文庫)。7月に公開され興収136億円の大ヒットアニメの原作で、62万8千部のヒットになった。人気作家では、東野圭吾は1月映画公開の『マスカレード・ホテル』(集英社文庫、14年刊、160万3千部)、『危険なビーナス』(講談社文庫、37万部)が堅調な売行き。湊かなえは『絶唱』(新潮文庫)が33万部のヒットになった。17年に直木賞と本屋大賞をダブル受賞した恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎文庫)は4月の刊行以来10月の映画公開もあり、上下計90万部にまで伸長した。
時代小説では、佐伯泰英の人気シリーズの完結が相次ぎ、新刊刊行が減ってきた。『居眠り磐音江戸双紙』は3月に「決定版」として再刊行が決まり、双葉社から文藝春秋へ出版社が変更した。このほか田郁、上田秀人など定番の人気作家に加え、葉室麟『螢草』、幡大介『大富豪同心』(いずれも双葉文庫)が伸長した。
ライトノベルと一般文芸の中間に位置し、イラストの表紙が特徴のキャラクター文庫は、毎年新規参入が多いジャンルとなっている。19年に好調だったのは集英社オレンジ文庫で、NHKでドラマ化された『これは経費で落ちません』、中華風ファンタジー『後宮の烏』、20年1月にアニメ化された『宝石商リチャード氏の謎鑑定』などヒットが相次いだ。このほか、『京都寺町三条のホームズ』(双葉文庫)、9月に映画化された『いなくなれ、群青』(新潮文庫nex)などがヒットした。
19年のライトノベル(文庫本)の推定販売金額は同13・9%減の143億円で7年連続のマイナス。2年連続で2桁減となっており厳しい状況が続いている。新刊点数は同12・3%減の1889点。19年はアニメ化作品のヒットが少なく、点数も大幅に減少したため、市場の縮小に拍車がかかった。『ソードアート・オンライン』、『魔法科高校の劣等生』(いずれもKADOKAWA)、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(SBクリエイティブ)、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』(小学館)など人気シリーズが手堅い売行きだった。
メンテ

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