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岐路に立つ出版物輸送/東京都トラック協会「出版物関係輸送懇談会」
日時: 2019/12/30 20:02:33
情報元: 日書連

東京都トラック協会(東ト協)の出版・印刷・製本・取次専門部会(瀧澤賢治部会長=ライオン運輸)は11月27日、東京・新宿区の東京都トラック総合会館で第41回「出版物関係輸送懇談会」を開催。「経営の岐路に立つ出版物輸送~急がれる出版物輸送を継続するための具体策~」をテーマに、荷主団体の日本雑誌協会(雑協)、日本出版取次協会(取協)、日本書籍出版協会(書協)、印刷工業会、東京都製本工業組合、日本書店商業組合連合会(日書連)と意見交換した。

東ト協の瀧澤部会長は、出版物輸送の現況について「経営として成り立たなくなってきていることが一番の課題。収支が合わず経営的に窮地に陥り、出版物輸送から撤退する動きが相次いでいる。部会員もピーク時の72社から23社まで減少した」と報告。「出版物輸送には人手と時間が掛かり、コスト削減が困難」と窮状を訴えた。
また、雑誌の売上低迷により業量が減少を続ける一方、コンビニエンスストア(CVS)の増加による配達先の拡大で、人手・費用の負担が増加し、「配達件数は増えても収入が増えず収支悪化を招いている」と指摘した。
運賃については、「時代の変化に伴い、従来の重量運賃では経営が成り立たなくなった。取次と協議して対策を講じても、それを上回るスピードで出版不況による業量減少が進行しており、もはや重量運賃では対応できなくなっている」と危機感を示した。
こうした状況を踏まえ、業量が減少を続けることを前提とした出版物輸送のあり方を考えることが喫緊の課題であるとして、「従来からの慣習の再検討・見直しを図るべき。出版物輸送業者は小規模零細が多く、時間の経過とともに体力がもたなくなる。スピード感をもって取り組まなければならない」と訴えた。
出版物流を止めないための具体策としては、(1)出版物流が抱える課題の周知、(2)業量に応じた弾力的な輸送、(3)事業継続可能な適正運賃・料金の収受――の3点に言及した。
(2)については「業量の増減に合わせて効率的な輸送方法を検討したい。たとえば、荷物が極端に少ない日は、荷主と相談の上でその日はトラックを止め、別の日にまとめて配送できないか」と提案。また、(3)については「厳しい出版不況の中、単純に現在1の運賃を2にするわけにはいかないことは理解している。そうした中、輸送業者も荷主も今やっている作業の無駄な部分をさらに見直した上で、コストに見合った運賃・料金を設定する必要がある」との考え示した。
そして、「今後、出版物をトラックという道具を使って配送することが本当に不可欠なのか」と問いかけ、「そうであるならば、トラックを使う方法を荷主の皆さんと一緒に考えていきたい」と呼びかけた。
荷主側から、雑協物流委員会の隅野叙雄委員長(集英社)は「売れる商品、運ぶ荷物を増やすことが出版社の使命」と業量増加への意気込みを示し、休配日について「週休2日まで段階的に増やすことを大前提に議論を進めている。ドライバーの労働環境改善を図りたい」と述べた。
トーハンの田仲幹弘副社長も「最終的に休配日を週休2日にしたい」との考えを示し、「今後休配日を増やしていくステップとして来年度の発売日設定をどうするか、雑協と話し合いを行っている」と報告した。
書協の中町英樹専務理事は「搬入日前後の新刊の集中を平準化することが長年の課題。出版情報登録センター(JPRO)を立ち上げ、搬入の事前調整が可能になってきた。出版社の意識も、なるべく早く計画的に本を作って搬入するという方向に変わりつつある」と述べた。
日書連の藤原直副会長・流通改善委員長(金港堂)は「雑誌が売れないから閉店する、売場が減るからますます雑誌が売れなくなるという悪循環に陥っている。新鮮な商品が毎日配送されることが店頭活性化につながるが、現状の出版物輸送の危機については皆さんと問題意識を共有している。休配日を増やす方向性も理解している」と述べ、輸送効率化をどう図るかが最大の課題と指摘した。
大日本印刷出版メディア事業部生産管理本部の結城博部長は「いかに少ない車輛でいかに効率よく配送するかを最優先に考えなければならない」と述べた。
共同製本の金子誉社長は「売れる時に売りたいという出版社の要望にはできる限り応えていきたいが、1ヵ月の中あるいは1年間の中での発行量平準化を継続課題としてお願いする」と述べた。
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