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「料理レシピ本大賞」/実用書で店頭活性化目指す/9月19日に第1回大賞発表
日時: 2014/09/03 14:35:13
情報元: 日書連


出版不況を脱却する試みとして、書店と取次の有志が創設した「料理レシピ本大賞inJapan」は、9月19日の第1回大賞発表に向けて準備が進められている。書店発の賞では本屋大賞が年々存在感を高め、大賞に選ばれた作品は毎回ベストセラーになっている。小説が対象の本屋大賞に対して、料理レシピ本大賞がユニークなのは実用書に絞った賞であること。実行委員長の今野英治氏(東京都杉並区・今野書店)は「料理本の指針を作り、増売と店頭活性化につなげたい」と意気込む。(白石隆史)

〔書店、取次の有志が創設/日書連舩坂会長が実行委顧問に〕
料理本の賞として、世界では「料理本のアカデミー賞」と言われるグルマン世界料理本大賞がある。毎年その年に発行された世界中の料理本やワイン本が大賞に輝き、世界の主要市場へ流通する機会を作っている。日本からも受賞作品が出ているが、読者への話題提供には至っていない。
料理レシピ本大賞は、日本では初となる料理本の賞。本屋大賞や芥川賞、直木賞などの受賞作品は読者の注目を集め、ヒット商品として売上を伸ばしている。ただ出版界の賞の選定対象は文芸やエッセイのジャンルに集中している。多くの読者がいて、ベストセラーやロングセラーも多い料理本の賞はなかった。
今年初め、東京で行われた書店、取次、出版社の懇親会の席で「料理本の賞があったらいいね」という話題で盛り上がり、その後、書店、取次の有志41名から成る実行委員会を立ち上げて一気に具体化した。
今野氏は「実用書である料理本は、規模の大小を問わずリアル書店に親和性が高いジャンル。この賞を通じて、書店から読者に料理レシピ本の指針を示し、魅力をアピールする。出版業界全体の売上増と書店店頭活性化の起爆剤にしたい」と話す。

〔実用書のロングセラー作る/料理レシピ本の「指針」に〕
料理レシピ本大賞は料理部門、お菓子部門からそれぞれ大賞1点、準大賞2点を選び、ベスト10までを表彰、30位までを発表する。
出版社88社から219点のエントリーがあった。60社・150点程度を想定していたが、「出版社の関心の高さに驚いた」という。
第1次選考は7月末まで行い、料理部門38点、お菓子部門5点が通過した。(1)レシピ主体の本か(2)家庭で再現可能な分かりやすく作りやすい内容か(3)料理を作ることが楽しくなる、また何度でも作りたくなる内容か(4)書店店頭で常備すべき内容か(5)日本の食文化の保護・発展に貢献する内容か(6)食育に貢献できる内容か――を一次選考基準に、全国より公募の書店員だけで選考した。
第2次(最終)選考は8月末まで行い、ベスト10を選んだ。選考結果は9月19日、東京・新宿区の日本出版クラブ会館で発表する。
業界には9月1日に情報公開し、19日までに書店が本を仕入れられるようにする。選考委員は書店員に加えて料理書・料理雑誌編集者、取次、飲食店経営者、プロの料理人、また作家の角田光代氏やフードジャーナリストの平松洋子氏など約20名が務めた。また、プロ並みの料理の腕前を持つことで有名な、お笑いコンビ「キャイ〜ン」の天野ひろゆき氏がアンバサダーに就任した。第2次選考基準は(1)美味しく手順等が分かりやすく再現可能なレシピかどうか(2)購入した読者が共感できる内容か(3)選考委員として推薦文を書いてもよいと思える内容か――の3点。プロの料理人が選考委員に加わったのは味と再現可能性を専門的な視点から確認するためで、実際に料理を作った上で投票してもらった。
賞の決定後、全国の書店で料理レシピ本フェアなどを開催する。販売には実行委員各書店はもちろん、日書連の協力も得たいという。実行委員会顧問を務める日書連・舩坂良雄会長を通じて各都道府県組合との協力体制を築き、増売に結び付けたい考えだ。また、書店大商談会やBOOKEXPOに料理レシピ本大賞コーナーを設けることも検討しており、出版業界全体の協力を得ながら賞を成功に導きたいとしている。
大賞作品の販売目標は10万部。今野氏は「本屋大賞や直木賞などの文芸賞の販売期間は2ヵ月程度。料理レシピ本大賞は平積みしてお客に薦めれば1年間通して売れる可能性がある。瞬間風速では本屋大賞のほうが凄いが、継続的に売れて最終的に積み上がったとき大きな数字になると思う」と自信を示す。
賞の冠を付けることで、読者の注目を集める。そして増売に結び付け、店頭活性化を図る――それが料理レシピ本大賞の最大の目的だ。今野氏は「来年以降も続けて、実用書ジャンルにおける本屋大賞のような存在にできれば。毎年受賞作が蓄積していくことで、料理本の指針ができる。『何かいい料理本はありませんか』と訊かれたとき『料理レシピ本大賞受賞作』というお墨付きのある本を薦めることができ、読者と信頼関係を築くことに役立つ。可能な書店はエントリー本全点フェアを実施してほしい。また、受賞作は常備してほしい。そうすれば棚が活性化し、売場全体にも波及する。出版社からはエントリーフィーをいただいている。書店だけでなく、出版業界のすべての人たちが喜ぶことができる取り組みを考えていきたい」と意欲を示す。
メンテ

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