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【 コミック市場9年連続前年割れ 】
日時: 2011/04/05 08:30:34
情報元: 日書連

出版科学研究所発行の『出版月報』2月号は「コミックレポート2010」を特集。

昨年のコミックス、コミック誌を合わせた推定販売金額は前年比2・3%減の4091億円で、9年連続マイナスになったことを伝えている。

同レポートからコミック市場の動向を拾ってみよう。

〔コミックスは5年ぶりプラス/『ONE PIECE』が牽引〕  コミックスの推定販売金額は前年比1・8%増の2315億円。

推定販売部数は同2・9%増の4億6849万冊。

05年以来5年ぶりに前年を上回った。

 増加の要因は『ONE PIECE』の大ヒット。

60巻の既刊すべてに重版がかかり、10年に発行された部数だけでも3960万冊に達した。

同作品を09年程度の発行部数としてシミュレートするとコミックス全体では2%程度のマイナスになる。

1作のみが突出して売れたが、それ以外に大きなプラス要素はないため、決して楽観できない状況にあると出版科学研究所は分析している。

 平均価格は3円(同0・6%)安の494円。

価格改定の多かった前年に比べ価格が安定しており、また400円前後と比較的安価の少年向けコミックスが大部数で発行されたことで微減になった。

 返品率は同2・4ポイント減の26・5%と大幅に改善した。

09年夏頃から取次が送品数の見直しを行ったことによるものと思われる。

出版社が売上推移や書店からの情報などを参考にして慎重に部数決定を行った効果があらわれた。

 新刊点数は前年より50点増加の1万1977点。

雑誌扱いコミックスの新刊点数は同48点減少の8851点だったが、廉価版を除くと同19点増の7445点と点数を伸ばしている。

書店扱いコミックスは同98点増の3126点の大幅増。

廉価軽装版、コミック文庫が減少した。

ジャンルの細分化が進み、『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン発行、角川グループパブリッシング発売)、『聖☆おにいさん』(講談社)などオリジナリティのある人気作品が生まれている一方、作品の多さに読者や書店がついてきていない面もある。

 コミック文庫は、推定販売金額が同14・7%減の71億円、推定販売部数が同16・8%減の1058万冊と激減した。

新刊点数は前年より85点少ない686点。

文庫化できる作品が尽きている状況にある。

発行部数も絞っているようだ。

 廉価軽装版の推定販売金額は同9・4%減の232億円。

推定販売部数は同8・5%減の5108万冊となった。

新刊点数は同4・5%(67点)減の1406点。

コミック文庫同様、コンテンツ不足が深刻なようだ。

〔『ジャンプ』以外は不振続く〕  コミック誌の推定販売金額は同7・2%減の1776億円、推定販売部数は同7・3%減の5億5917万冊で、15年連続のマイナスになった。

 月刊誌・週刊誌別にみると、販売金額は月刊誌が同10・2%減の872億円、週刊誌が同4・1%減の903億円。

販売部数は月刊誌が同11・8%減の2億1040万冊、週刊誌が同4・3%減の3億4877万冊。

 販売金額を読者対象別にみると、月刊誌の子供向けは同9・3%減の288億円、大人向けは同10・6%減の584億円、週刊誌の子供向け(少年週刊誌)は同0・1%減の575億円、大人向け(青年週刊誌)は同10・5%減の328億円。

微減にとどまった子供向け週刊誌以外は10%前後のマイナスと、退潮のスピードは加速している。

子供向け週刊誌は、『週刊少年ジャンプ』が300万部を超える号も多く絶好調。

一方、『週刊少年マガジン』は「ダイヤのA」などの人気で微減にとどまったものの、155万部とジャンプの半分近くにまで縮小している。

AKB48の限定付録を付けた『週刊少年サンデー』など単号が販売する雑誌はあったが、いずれも持続性に欠けている。

 平均価格は1円(0・3%)アップの333円。

内訳は月刊誌が7円(1・7%)アップの424円、週刊誌が前年並みの265円。

定価改定を行った雑誌は『少年ガンガン』『プリンセス』など約30点で、前年より約20点少ない。

 10年12月末時点での月刊誌・週刊誌を合わせた発行銘柄数は前年より12点減の288点となり、増加基調から減少に転じた。

創刊点数は前年より5点少ない9点。

休刊点数は同5点多い23点。

雑誌全体で休刊誌が続出しているが、今年はコミック誌の休刊も多かった。

主な創刊誌は『ヤングエース』(角川書店発行、角川グループパブリッシング発売)、『シルフ』(アスキー・メディアワークス発行、角川グループパブリッシング発売)、『ARIA』(講談社)など。

〔問題はコミック誌の部数減〕  推定販売金額におけるコミックスとコミック誌の比率は56・6対43・4となり、その差は13・2%と大きく開いた。

金額差では539億円と、その差は年々開いている。

 コミック市場の問題はコミック誌の減少だ。

10年は『ONE PIECE』の大ヒットのおかげでコミックスが5年ぶりに前年を上回ったが、コミックスの母体であるコミック誌は大半が部数を減少させており、危機的状況になっている。

 ケータイやゲーム機の普及など娯楽の多様化の影響で、通勤通学電車内でコミック誌を読む読者が減った。

さらに、紙媒体とは読者が別と言われる電子コミックの市場が年々拡大しており、コミック周辺の環境は変化が激しい。

デジタル時代になって売り方、買い方、選び方が大きく変容している。

だが、面白いコンテンツを読みたいという読者のニーズは変わらずに存在し、コミック読者もしっかりと存在している。

「面白い作品を作り、作品を読者に知ってもらう。

そして読者の反応をキャッチし、広めていくこと。

当たり前なことではあるが、それが今後を考える上で何よりも重要」と出版科学研究所はまとめている。
メンテ

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