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【 出版産業の課題解決に向けて 】日書連
日時: 2009/08/08 12:08:58
情報元: 日書連

 「本の学校・出版産業シンポジウム2009in東京」が東京国際ブックフェア会期中の7月11日、東京ビッグサイトで開催され、「出版産業の課題解決に向けて―これからの取引・流通・販売のあり方とは―」をテーマに行なわれた。

文化通信社・星野渉取締役編集長を総合司会に、筑摩書房社長・菊池明郎氏、丸善社長・小城武彦氏、日販常務取締役・安西浩和氏、トーハン専務取締役・近藤敏貴氏、NET21取締役副社長・田中淳一郎氏がパネリストとして出席。

それぞれの立場から、委託制度の問題点や責任販売など今後の取引システムのあり方について発言した。

【責任販売推進で返品減図る】 星野 今日は「出版産業の課題解決に向けて」というタイトルだが、ポイントは取引の問題に絞られていくと思う。

雑誌に依存していた出版産業のモデルが非常に厳しくなってきている中で、返品などを削減することによって書籍がきちんと自立したビジネスモデルを獲得できるか。

それによって出版社、取次、書店が、きちんと再生産をしていける構造をこれからも維持できるのか。

それが今大きなテーマになって、取次、出版社などから責任販売という形で具体的な提案がされていると思う。

 今日はその最先端でお仕事をされている方々に出席いただいた。

いきなり核心から入り、どういう取引システムがよいだろうかというところから、話を始めさせていただきたい。

 安西 私はずっと物流一筋で会社人生を送ってきたのだが、昨年初めて書籍や雑誌の仕入れを担当することになった。

書籍は正直ほとんど赤字に近いという構造だと思う。

書籍で儲かる商売の体系を作っていかないと、本当にまずいのではないかというのがこの1年の印象だ。

 書籍は40%をゆうに超える返品率だ。

いろいろな課題が業界にあるのだろうが、やはり返品を減らして、そこで生まれた利益を皆で分け合うということが、一つの解決策としてあるだろう。

今売れ残りのリスクを一番背負っているのは出版社で、その分マージンの配分も出版社のほうが多くなっているということだろうと思う。

 逆に、返品を仮に書店の努力によって減らしても、書店には何の実入りも増えないというのが、今の取引制度の実態だろう。

書店に新しく生まれた利益を還元できるようなビジネスのスキームを考える必要があると思う。

 返品が悪だと考えるならば、取引の制度の中で返品をした人が損をするような仕組みを構造的に作るべきだ。

逆をいえば、返品をしなかった人がもうかる仕組みだ。

掛け率やマージン率を変えるとか、いろいろな考え方がある。

 今責任販売で提唱されているのはそういうスタイルだと思うが、それをもう少し通常の取引の中に導入していくことが必要なのではないか。

それに合わせて、商品の供給をきちん保証するというようなことを、取次がリスクをとってやる仕組みを作っていくことが必要なのではないかと思う。

 小城 私は2年前に出版業界に入ったのだが、来て思ったのは、なぜこんなに皆一生懸命やっていながら、皆儲からないのだろうということ。

何とかこれを変えたいと思っている。

 分かったのは、出版業界のマーケティングが大変弱いということだ。

委託に小売が甘えていると思う。

書店がちゃんとお客さんを理解して、どういう書籍をお勧めするべきかを考えて陳列をし、売り切っていく力をまず付ける。

顧客接点の一番前線がしっかりしないと、業界全体のマーケティングの仕組みが回らないのではないかと思う。

 菊池 高い返品率を解決しなければ、厳しい状態が続く。

出版業界が厳しくなったのは、委託制の限界が来てしまっているのではないか。

出版社の側から言えば、不況が進行してくると、お金がほしいので売れるか分からない本を作りすぎる傾向がある。

作る側ももう少し企画を厳選して、作る部数もきちんとしたマーケティングを行いながら抑制気味にしていく。

そういう注意が必要だろう。

 よく書店から聞くのはパターン配本の限界ということだ。

出版社、取次、書店で協力して、もっと精緻な配本制度を考えていく必要があるのではないか。

委託の運用がノールール化している状態を具体的に改善していくことが必要だろう。

 出版社8社の仲間で書店のマージンを35%にする提案をした。

責任販売というと書店に責任を押し付けているみたいで嫌だということで、「35ブックス」と名づけた。

その代わり返品した場合には安くしか取りませんよという仕組みだ。

業界をよくするために、具体策を打ち出していかなければいけない時期に来ているという認識を持っている。

 近藤 取引を我々がどう変えていくかということについては、日販の安西常務にほとんど先に言われてしまった。

一緒にやれることがあれば、取次で無駄な競争をしないでやっていこうということを、まず申し上げたいと思う。

 どんな取引制度が望ましいのかだが、その前に現状の取引制度の基本になっている再販制度について、一度整理する必要があると思う。

そもそも再販制度を作ったときにこんな返品率を想定していなかった。

出版社、販売会社、書店の分け前は、再販制度を前提に作っているわけだから、ひずみが出るのは当然だ。

その中で書店が身を削ってやっているのが現状だと思う。

 その解決策として、責任販売や、新しい個々の取引にチャレンジをしているところだ。

責任販売は今のやり方がベストだとは思っていない。

書店や出版社だけがリスクを負う形は決してよくないと思っているし、我々もこれからはリスクを背負っていくつもりだ。

 ではこうした利益を再配分する原資はどこにあるのかというと、間違いなく返品を減らすことしかない。

逆をいえば、返品を減らせばそれぞれの取り分を増やす原資はまだある。

現状の取引についていえば、いい形に直していこうというのが、目指すべき方向ではないかと思う。

 田中 現状ほとんどの商品は委託制度の中で流れているわけだが、配本の精度をよくすることで、委託制が生き延びることができる可能性は十分ある。

毎日開けている荷物の内容を見れば、どの書店もおそらくそのように考えているのではないか。

 私は2002年に今の取次に替わったのだが、そのときの条件で、新刊の必要がないものをカットしてもらうように事前に打ち合わせをして配本のFAXを送ってもらい、その中から要らないものを削るという作業をしばらくしていた。

それで、45%近くあった返品が35%ぐらいまで落ちた。

 これは売上げが下がったとか上がったという問題ではなくて、配本の精度を上げることで少なくとも返品は下がるという現実だ。

だから配本の精度を上げることによって委託制は維持できると考えている。

 例えば、出版社、取次、書店と三者が契約して新しい取引を始めるというふうにしていったらどうか。

委託制で流したり、あるいはもう一つ新しい取引形態で商品が流れてくるという仕組みを作って、書店が選択できたら、非常にありがたい。

責任販売制は、最終的には書店の責任で本を仕入れてくださいという意味合いだと思う。

それを考えれば、書店が納得できるような選択肢を作ってほしい。

【配本精度のアップも必要】 星野 今のお話の中で、委託の限界という言葉がよく言われている。

返品が自由だという世界から、まったく返品できないという完全買切りの世界は相当幅がある。

田中さんは委託はまだやれるだろうと。

ただ、一方的に送る配本ではなくて、書店が選択しなければいけない。

誰が商品供給、調達のイニシアティブを持つべきか。

その辺りについて、委託の限界というところを踏まえて伺いたい。

 安西 田中さんが先ほど三者間の契約というお話をした。

新しい販売形態をとる上で、それに伴って商品の選択権や供給権をきちんと保障しないと、おそらく新しい仕組みは作っていけないだろうと思っている。

 今具体的に我々が導入しようと思っているのは、書店との間で返品と売上げ目標みたいなものを決めさせていただき、その目標を達成すると報奨を支払うことができるというもの。

そうやって契約の概念をきちんと作りながら、賛同をいただける書店を今集めているところだ。

 書店からの注文や新刊の申込みを受けて満数配本しますというような仕組みを前提にして、書店にリスクをかぶってもらう、あるいは我々もリスクをとっていくというようなことをやろうと思っている。

イニシアティブを持ったところが責任をかぶれるような取引形態にするべきだろう。

田中さんがおっしゃった、責任販売が並存するような取引は可能だと思う。

全員が右向け右で動くわけがないので、そのへんのリスクをかぶって調整するのが取次の役割なのかなという気がしている。

 近藤 配本の精度を上げることで返品率が改善できるかというと、まだまだできると思う。

そのイニシアティブをどこがとるかは、ちょっと言い切れない。

ただ、日販さんも我々も、過去と比べ物にならないほど販売のデータをかなり持っているので、どちらかというと我々に移してもらったほうがいいかなと思う。

 仕入れた商品をある程度ストックして、市場在庫を見ながら供給する。

新刊については、基本的にはそういうことを始めている。

出版社側の理解が得られないと、「これをあんたのところに任せるよ」とはいかないので、今実績を積み上げてご納得いただき、我々がほぼできるような形に持っていければと思っている。

 ただ、書店が商品を発注するという仕事は絶対に残さなければいけないと思っている。

書店の中にはきちんとした発注ができるお店とそうでない店があるので、すべて同じ対応はできないと思う。

そうしたコントロールをするのが我々の仕事だと思っている。

 小城 現場にいる人間こそが、お客さんが何を求めているかを一番分かっているはずだ。

だったら現場にいる人間こそがそれを必死に追い求めて、自らのリスクで発注すべき。

これが商売の原点だと思う。

ただ、書店はこれまでやったことがなかったので残念ながらすぐにはできない。

どうやったらそこに近づけるのか、そういう議論だと思っている。

 私は着任してすぐ、フランクフルトのブックフェアに行くチャンスがあった。

ドイツには再販があるが、委託ではない。

返品率は5%と聞いた。

書店員が自分で売れるという自信を持った本しか仕入れない。

だから、店舗ごとにラインアップがぜんぜん違うという。

 日本はどこに行っても基本的にあるものはそんなに変わらない。

私は書店にもっと個性があっていいと思う。

そこに商売の喜びがあるはずだ。

従って、リスクを取れる人はハイリターンを取り、それをできない人は現状で頑張るというのがしばらく続くのはやむをえないと思う。

 あと、自動配本は改善の余地はけっこうある。

うちでもある店舗を調べたところ全体の4分の1ぐらい、1冊も売れずにそのまま返している。

ただ書店側にも問題があって、新刊の追加発注は多すぎる。

結局それもまたお返ししているので、両方に問題がある。

 星野 こういう議論の中で、発注能力がないのだから、書店に発注のイニシアティブを渡すことはできないだろうという意見がある。

田中さん、現場で毎日仕事をされていて、どう思うか。

 田中 書店として生き残るのであれば、ないはずはないと思う。

現場としてはその商品の感触というか、実物を見てから注文したいというのは非常に感じる。

これは売れるんじゃないかとか、これはうちには絶対あわない商品だなといったことで、毎日店でお客さんの顔を見ていれば分かるものがたくさんあると思う。

 そういう意味では、見本配本とは言わないが、委託で見本程度に商品が流れてこないと難しいだろうという感触は持っている。

やはり現場にいる人間が現場感覚で本を仕入れなければ、何のために商売をやっているか分からないと思う。

 安西 何でもかんでも書店に買い切りなさい、リスクをとりなさいというような議論になりがちなので、発注能力の問題は取次のほうから、例えばご提案とか事前にお見せして、直したり、要らないと言ってもらえるようなフォローをすることが必要だろうと思う。

今の見本の件も、送りと返品と売上げのみならず、店頭の在庫まで分かるような環境になっているので、薄めにまいて、意外な著者が売れたらそこから一気に追加の供給を保証する。

そういうことをあわせてご提案をすることができる。

 田中 東京にまったくない本が、地方に行くとけっこう山積みになっていたりする。

そういうものも含めてすべて市場在庫というならば、取次はそこで調整機能を発揮するという考えはないのだろうか。

 近藤 偏在するということは確かにある。

重版も新刊もそうだが、昔この店でいっぱい売ったからとりあえずいっぱい入れておこうよというのは、確かに多い。

偏在を少なくして、返品を減らすということを当然しなければいけないことだと思う。

 菊池 ドイツは同じ再販でありながら日本と対照的で、確かに返品は5%ぐらいに抑えられている。

なおかつすごいのは、売上げが少しずつ伸びている。

じゃあ直ちに買切りかというと、日本の業界はそこにまだ慣れていないから、委託そのものをなくせと言っているわけではない。

配本をどこが主体になってやるかというとき、出版社は書店の近い過去のデータをきちんと押さえて、それに基づいてこういう形で配本をしたいという提案をできるはずだ。

 ただ限界はある。

その中で、今回提案しているような責任販売の仕組みを組み込んでいく。

それ以外にも、例えば特約店システムというところで、返品率を大きく下げられた場合には、それに応じてマージンを考える。

出版社としてもそういう考え方はとれるかなと思っている。

 星野 新しい取引のルールということになると、今までの利益配分ということではないだろう。

むしろ書店のマージンをもう少し増やさなければいけない。

これは多分共通したお考えだと思う。

そのへんの利益配分について伺いたい。

 田中 本屋がやめていく状況というのは、やれなくてやめてしまう場合と、後継者がいなくてやめる場合と、大きく二つだと思う。

やりたい商売であれば、後継者がいないということはないと思うので、現状あまり書店をやりたくないのだろうと推測できる。

それを考えると、今の人件費に割く割合を50%ぐらい上げられるような水準の業界にしていくのであれば、利益として35%ぐらいはほしい。

 買切りということになると、その中でどうしても売れない商品が出てくるので、最低40はないと。

できれば買切りの商品に関してはある程度時限再販できるようなものにする。

そうすれば書店としてもリスクが減っていくのではないか。

 小城 社長の立場から言うと、もうちょっと従業員に高い給料を出したい。

弊社の場合も正社員比率はかなり低くなっているのだが、男性の場合には結婚を機に退社する。

家族を養えないからで、つまり書店員という職業は自立できていない。

やはり粗利で35とか40%は最低限だ。

そのぐらいないと給料を払えない。

 菊池 書店が厳しい状態にあるのは確かだ。

出版社側も、もうこれ以上マージンを出せないと、今でも多くの人たちは思っているだろう。

ではいったい原資をどこに求めるのか。

今回35ブックスみたいな形で特別にマージンをひねり出すのは、原価率を安くできるものを選んでまずは送り出しているということで、全部が全部いっぺんにできるわけではない。

 それは、日本の本が安すぎるからだ。

ドイツは同レベルの本が2倍以上する。

そのような状態を読者の方に理解していただき、日本の文化を発展させるために出版社が値上げするのを、「よし分かった」と買ってくれないと、最終的には解決しないということだ。

だからロングレンジで見たときに、大手さんも少し値上げに努力していただけるとありがたい。

 安西 この議論は取次は非常に難しいというのが正直なところだ。

書店の競争力が上がるような条件をベースにしながら、取次は工夫しなければいけないだろうと思っている。

取次は返品が減って楽になるだろうから取次のマージンを落としてしまえと、こういう論議の中でけっこう言われたりする。

我々は投資もするし、リスクも当然取りながらやっていくわけなので、下げるということは考えられないとは思う。

 近藤 やはりまず書店が先に元気になってもらう利益配分にしてほしいということと、マージンをこれ以上というより、返品が減ったほうがずっと儲かるので、そっちのほうが我々にとってはいいと思う。

ただ、いろいろな形の条件の商品が入ってきて、いろいろな形で返品されてくる。

けっこうシステムを作るお金がかかるので、そこは考えてもらえたらと思う。

【書店が本を選べる仕組みを】 星野 35ブックスで非常に画期的だと思ったのは、取次が新しい取引形態にシステム的に対応するということを宣言したことだと思っている。

今後利益配分のことはもう少し議論になっていくという感じがする。

 先ほど書店の後継者の話があって、とくに中堅以下の書店が非常に厳しくなっている。

例えばマージンがある程度変われば、中小書店の経営は今後安定していくのだろうか。

 田中 難しい問題かもしれないが、まず書店が自助努力すれば経営状況がよくなるという実感が持てるか持てないかだと思う。

あるいはさっきの配本にもあったが、選択できるということだ。

今、新刊配本は、まず選択の余地がなく、勝手に送られてくるという状況がある。

 まずお客さんに信用されるお店でなければいけない。

そういう点で、自分たちで本の選択ができるというのは非常に大きいことではないか。

もちろんマージンがあればそれだけ楽になると思うが、それに見合った仕事の内容がなければやりがいも起きないのではないかと思う。

返品率だけというのは、意外と書店にとってはモチベーションは上がらない。

返品率を下げればマージンをもらえるというのは、じゃあ仕入れるのをやめようみたいな方向に流れがちだと思う。

やはり業界全体で書店がやる気を起こさせるような仕組みを作ってほしい。

 菊池 売上げを上げつつ返品率を抑えていく、それに対して何か手当てをするという考え方自体は受け入れられると思う。

どうやって実現するかというところで、知恵を出していかなければいけない。

 小城 東京都書店組合の立場で発言するのだが、やはり田中さんと同じ問題意識があって、売りたくても商品が来ないという声をすごく聞く。

返品を下げる、もしくは実売率を上げるのであれば、商品供給はちゃんと保証されなければいけない。

そこはぜひ取次にもお願いしたい。

 田中 偏在はまちがいなくしていると思う。

一番危惧するのは、責任販売制ではないにしても、例えばある取次のサイトで高正味で買えば商品はあるのだから、もしないのだったらそっちで買ったらどうですかみたいな、中小書店には高い正味の商品を案内して、大書店にはドンと積んである。

何かシステム矛盾を感じるような場面もある。

その不透明さみたいなものが、書店の不人気にもつながると思う。

 近藤 先ほど偏在と言ったが、それを解決する手段はいろいろやっている。

一つの解決方法として、責任販売がある。

この商品を私のところは10%の返品で仕上げますから必ず入れてくださいという意思表示をしていただいた書店には100%供給する。

意外と中小の書店さんには評価をいただいていて、こういったものを積み上げていくことが、偏在とかそういうことを解決することになるのではないかと思っている。

 菊池 我々中堅から小さい出版社は、大ベストセラーは出ないけれど、ロングセラーとかそこそこの売れ筋というのは持っている。

そのクラスの品揃えが、まだまだ悪い。

我々としては情報を流しているつもりだが、大きめの書店でもポコンと抜けてしまっていることがある。

売上げが上がれば相対的に返品率は下がるわけだから、書店の現場の方々が情報をうまくとって品揃えをしていただく。

そのために、例えば出版社の団体などからもっと提案していかなければいけないのかもしれない。

 星野 最近の業界再編について小城さんにお話を。

 小城 丸善はDNP(大日本印刷)グループに入った。

DNPはもともと出版印刷を事業の基軸と思っている会社であり、出版業界の衰退を止められないかという意識を大変強く持っていて、力を貸さないかという話があった。

顧客接点を丸善は担っているので、どういう方法があるのか一緒に考えようではないかということで、DNPグループに入ることを決断した。

我々のグループだけではなく、この業界全体のために何とかできることはないのかということを、今一生懸命考えている。

【ロングセラーを責任販売に】 星野 最後に、個々の出版社や書店はこれからどういうことを考えていかなければいけないかということの提案を含めて、お一人ずつ発言していただきたい。

 安西 責任販売とかいろいろな話が出たが、商品の供給の件で、書店と出版社の間でさまざまなブレとか違う思惑が明らかにあると思う。

我々中間の業者としては、そこをきちんと受け止めて、我々の責任を受けるという方向で、足を踏み出したいと考えている。

 小城 我々書店がお客さんをちゃんと見て、きちんとものを丁寧に売っていくという原点をもう一回再確認し、そこに注力をするということだと思う。

菊池さんが、本の価格は安いとおっしゃったがまったく同感だ。

もっと価格を上げていい、その分丁寧に売ったらいいと思う。

 菊池 書籍に限った話だが、決して将来を悲観しているわけではなくて、読者の方々はちゃんとしたものを出版していけば必ず反応してくれるという実感を持っている。

ただ、専門書などを出している出版社にとって厳しいのは、大学から公立図書館に至るまで、図書予算が減らされたままであることだ。

来年は国民読書年だが、例えば自治体に向けて、図書予算を回復してほしいというような要求を突きつけること。

出版物が多くの読者に受け入れられていくような具体策を、我々は一つずつ積み上げていかなければいけない。

 近藤 先ほど責任販売であるとか、個々の取引条件の中で今解決しなければいけない問題があると申し上げたが、これだけで書店の状況が変わるかというと、決してそんな甘いものではないと思う。

書店が本を売ることに集中できるような仕組みを、我々はファイナンスを含めて考えていかなければならないし、果たすべき役割は大きいと思う。

 田中 今責任販売制というのがいろいろ出版社から出ている。

ペーパー1枚でいくつ注文するという話で、書店にとっては非常に難しい状況だ。

筑摩書房でいえば、ロングセラーになった『思考の整理学』のようなものを責任販売制にしてもらえばこちらもやりやすい。

版元さんにはぜひ考えていただきたい。

 書店の立場として書店をどうしていくかというのはおこがましい話になるが、書店が何のために毎日商売をしているのかを、とことん考えなければいけない。

どうして売上げが下がったのか、どうしてお客さんが来ないのか、そういう疑問を持ちながら、書店としてあるべき姿を作り上げていってもらえればと思う。

メンテ

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