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書店雰囲気に凝る バーや家具空間編集
日時: 2003/02/25 10:07
情報元: 日経MJ < >
参照: http://www.books-ruhe.co.jp/



オーナーや店長の趣味や感性を色濃く反映した・新機軸の書店が次々に誕生している。
置く本を選ぴ抜くのはもちろん、居心地のいい内外装を工夫したり・飲食を取り入れたり……。
出版不況という逆風が吹き付ける中、店舗自体をエンターテインメント空間と化し、消費者に新たな本の楽しみ方を提案している。
東京・中目黒の目黒川沿いにたたずむブティックのような雰囲気の店。
若い女性たちが、不思議そうに中をのぞき込んでは入っていく。
昨年9月に開店した古書店「カウブックス」だ。
店内ではオリジナルのTシャツやバッグも販売し、壁をぐるりと1周する電光掲示板には「B00K BLESS YOU」といったメッセージが流れる。
エッセイストでもあるオーナーの松浦弥太郎さんは、3年前にトラックに書籍を積んだ移動書店を始めて話題を呼んだ。
今回のカウブックスは「お客の立場になって居心地のよさを追求している」。
あえて本棚を詰め込まず、店の中央には特注した読書用の長テーブルを据え付けた。
300円で販売するコーヒーは、自家焙煎(ばいせん)しているコーヒー店に頼み込んで手に入れたものだ。
本の仕入れも独特。
古本市には参加せず、欧米に渡っての買い付けや一般客からの買い取りが主体。
それもアレン・ギンズバーグ、武田泰淳など作家名をホームページに例示し、買い取る本を選ぶ。
「自分たちが実際に読み、薦めたいものしか売らない」からだ。
その代わり、販売価格の25−35%という「通常の古書店の数倍」の買
い取り価格をつける。
絶版ものが主体だが、マニア向けではなく中心価格帯は1000−2000円。
海外からも頻繁に書店関係者が見学に訪れている。


東京・六本木に2001年末、オープンした「東京ランダムウォーク ストライプハウス店」は、元は美術のギャラリーに使われていた空間を活用し右半地下になったフロアは天井まで約4bもあり、美術作品を照らすためだった移動式照明が店内をライトアップする。
米国人写真家の依頼で写真展を開いたり、カード会社のテレビCMの舞台になるなど、アート的な雰囲気が注目されている。
土地柄、外国人が多い。
日によっては客の6割を占める。
同店を運営するのは洋書輸入のタトル商会(東泉・港)の関連会社。
その強みを生かし「和書、洋書という棚の分け方はしない」(稲葉恵一店長)。
例えば映画関連の棚ではキューブリック監督を題材にした和書と洋書が隣り合い、さらにSF映画の解説本や空想建築デザインなどの和書と洋書が混在して並ぶ。
旅行ガイドのコーナーでも「地球の歩き方」の隣には英語の「ロンリープラネット」がずらりと並ぶ。
売上高は和書・洋書がほぼ半々・平均客単価は3000円と高い。
異業種からの参入組も新風を吹き込んでいる。
東京・中目黒の「buro−stil(ビューロスタイル)」は近くでインテリア店を営む村井祐朗さんが昨年9月開いた。
「書斎」をイメージした店内は、古書もインテリアのひとつととらえ、家具などと組み合わせる楽しさを提案する。
古びた本棚などのじゅう器類もほとんどが売り物。
デンマーク製のデザイン机が9万8000円、棚に取り付けるライトが6500円といった具合だ。
品ぞろえは1960−1970年代のデザイン、建築、ファツション関連が中心。
インテリア店で培った古物ルートからもユニークな本を仕入れる。
例えば1960年代の海外の旅行ガイド(1500円前後)はデザイン性も高く女性客に人気だ。
バーなど飲食店7店を展開するソーバーグループ(東京・港)が東泉・西麻布で運営する「テーゼ」は、r大人の夜の図書館」がコンセプト。暗めの照明の中に小説やノンフィクションめ単行本が詰まった本棚が浮かび上がり、バーカウンターと共に落ち着いた空気を醸し出す。
ゆっくり本を読みながら、酒やコーヒー、数種類のカレーを中心とした食事も楽しめる。
3000冊を超える蔵書は販売はしないが、会員になれば本の価格の10%の代金で1、2週間の貸し出しも受け付ける。
現在300人が会員で、常時15冊ほどが貸し出されている。
中には店に断り、旅行ガイドを借りて海外旅行に持っていく客もいる。
メーンテーブルは中国の木製の巨大な扉を改造したもの。
大きな本棚を左右に開くと隠し部屋が現れるなど、遊び心を刺激する仕掛けも十分だ。
出版社のアルメディア(東京・豊島)によると、昨年までの3年間で全国で約2400、1割以上の書店が閉店に追い込まれた。
若年層の活字離れに加え、取次会社側が納入する本を取捨選択する「パターン配本」などに依存し、書店ごとの魅力が見えなくなっているとの意見も強い。
新機軸の書店のオーナーたちの取り組みは、こうした風潮から脱却するものだ。
もっとも、一見変わった店だからこそ消費者への認知が進むのに時間がかかる面はある。
六本木の東京ランダムウォークも「目標とする売上高にはまだ届いていない」という。
カウブックスの松浦さんは「自分たちの店がきっかけで、若い世代が店を始めるとき、本屋という選択肢を考えるようになってほしい」と話す。
個性的書店が大きな潮流になるかは、この点にもかかっている。

(石森ゆう太)

日経MJ 2003/2/25 24面より引用

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